「ミンダナオ島で『シルシラ対話運動』が活動再開」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

ミンダナオ島で「シルシラ対話運動」が活動再開

第二次世界大戦中に旧日本軍によって侵攻され、戦争末期には兵士だけでなく、日系人を含む数万人が犠牲となったフィリピン南部ミンダナオ島。住民の大半がムスリム(イスラーム教徒)の島だったが、戦後、人口が過密な同国中北部からカトリック信徒を中心とする大勢の移民が入植し、社会の主導権を奪われたムスリムの怒りが爆発した。すでに存在していた分離独立運動にも火がつき、「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)や「新人民軍」(NPA)などの反政府グループが国軍と交戦するようになり、特に同島西部は激しい紛争地帯となった。

その後、2001年に発生した米国同時多発テロ後の世界から生まれてきたイスラームを名乗る過激派組織の台頭により、「アブ・サヤフ」「ジェマ・イスラミア」といった国際テロ組織が、同島西部でMILFなどの伝統的な分離独立運動と連携するようになった。キリスト教徒を中心とするフィリピン国軍が米軍と協力して過激派組織の掃討作戦にあたったが、現在でも両者の間で緊張が続いている。

こうした対立構造を打開すべく、カトリック宣教師のセバスチアーノ・ダンブラ神父(教皇庁立外国宣教会/PIME)によって「イスラームとキリスト教間の対話促進を通じた和平の追求」を目指す「シルシラ対話運動」が創設されたのは、1984年のこと。同運動は、「調和村」と呼ばれる場所で「キリスト教徒とムスリムが共存する」という具体的な体験から出発。「『神』『自身』『隣人』『創造(自然)』という4側面からの対話を、自身の生活形態とする」ことを説き、公布していくことを目的としている。

同対話運動は36年間にわたり、対話文化を学び、実践していきたいと願う、諸宗教者やさまざまな国籍の人たちに対して、「1カ月間のコース」「1週間の集中コース」を提供してきた。2年前から新型コロナウイルスの感染拡大により活動を中断していたが、このほど、対話を学ぶコースやセミナーを再開したとのことだ。

活動再開にあたり、同対話運動は、「現在は分断と紛争、経済危機、環境破壊、宗教的・文化的偏見といった世界であり、特に、ミンダナオ島での状況の中で、神が私たちの生活を変革させ、全ての人のうちに神の愛があると認知することを、私たちに許すように」と訴えた。

また、同運動は以下のようにも主張している。

◆私たちの兄弟姉妹に対しての愛を表明し、慈悲深くあることによって、わたしたちの信仰を生きよう
◆私たちの文化、宗教信仰と伝統の違いを評価しよう
◆私たちの『共通の家』である創造(自然環境)の保全を共に遂行していくため、創造とも対話しよう
◆ムスリムとキリスト教徒を、人類友愛と対話文化の精神に沿って養育し続けていこう

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