原爆投下から77年 恒久平和を願い、被爆地・広島、長崎で原爆殉難者慰霊式典
広島、長崎への原爆投下から77年を迎え、立正佼成会の広島、長崎各教会では慰霊式典がそれぞれ行われた。参加者は犠牲者に慰霊の誠を捧げるとともに、世界平和の実現に向け、誓いを新たにした。
広島教会「広島原爆殉難犠牲者慰霊供養」
広島への米国の原爆投下から77回目の「原爆の日」を迎えた8月6日、広島教会は教会道場で「広島原爆殉難犠牲者慰霊供養」を挙行した。新型コロナウイルスの感染対策のため会員は参集せず、式典の様子をインターネットの動画共有サイトでライブ配信(会員限定)。会員たちは動画の視聴を通し、犠牲者の冥福を祈り、慰霊の誠を捧げた。
式典では、原爆の悲惨さを伝える映像作品の配信、少年部員(9)と学生部員(12)による献鶴に続き、読経供養が行われた。導師をつとめた原章雄教会長が回向文を奏上し、焼香した。
原爆被爆者の証言とアオギリの木の物語をまとめた映像作品「被爆者とアオギリのメッセージ」の配信に次いで、原教会長があいさつに立った。この中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に触れ、核兵器の使用を示唆するプーチン大統領の発言により、核抑止力が必要との風潮が強まっていると指摘。命を脅かす状況が強まっているが、その一方で安全・安心を願う世界の人々の心も高まっていると述べた。
その上で、一つの思いが三千世界に影響を及ぼす「一念三千」の教えを説明し、自らの心を整えるとともに、宗教者として世界平和を真剣に祈り、身近なところで平和の大切さを伝えていくことが重要と強調。「世界平和は自分たちがつくるという思いで本気になって祈り、語り部として一人でも多くの人に伝えることを、私たちから実践させて頂きたい」と語った。
長崎県宗教者懇話会「第50回原爆殉難者慰霊祭」
長崎県宗教者懇話会による「第50回原爆殉難者慰霊祭」(主管・長崎県明るい社会づくり運動推進協議会)が8月8日夕、長崎市の原子爆弾落下中心地碑の前で開催された。同懇話会に加盟する長崎県下3教会(長崎、佐世保、諫早)の会員をはじめ、諸宗教者や市民約800人が参加。本会本部から和田惠久巳総務部部長、佐原透修総務部次長(渉外グループ)が参列した。
慰霊祭では、カトリック中町聖歌隊による「慰霊聖歌」(レクイエム)の合唱、「お清めの儀」に続き、原爆の熱線に焼かれて水を求めながら亡くなった人々への「献水の儀」が行われた。
浄土真宗本願寺派光源寺・ひかり子ども会の小学生2人の「平和への誓い」が音声で流された後、慰霊祭に参列する諸宗教教団の青年代表30人が「平和の灯」を献じた。
次いで、参列者を代表して宗教者ら5人が「慰霊のことば」を捧げた。この中で、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の植松誠理事長(日本聖公会主教)は、原爆の犠牲者や、今なお後遺症に苦しむ被爆者に思いを馳(は)せるとともに、同日本委として核兵器使用のリスクが極度に高まっている国際情勢を注視し、戦争や核実験の被爆者の声を社会に広く伝えていくなど、核廃絶に向けた取り組みを続けていくと誓った。
参加者による黙とう、献花、「長崎の祈り」の合唱に続いて、同懇話会副会長の出射優行長崎教会長が閉式の辞を述べた。出射教会長は、同慰霊祭が50年前に初めて催されて以来、半世紀が経った今も、宗教者が宗教宗派を超えて殉難者の悲痛な叫びを受けとめ、平和を祈り続けていることに感銘を受けると話し、戦争や核兵器が廃絶されることを願った。
また、77年前に原爆が同県に投下された9日午前には、長崎教会による「原爆犠牲者慰霊法要」が新型コロナウイルスの感染対策を施した上で教会道場で挙行された。「献水の儀」、出射教会長導師による読経供養、和田部長の挨拶に続き、佐原次長が講演に立った。
佐原次長は、本会ウェブサイトに掲載されている「ウクライナ情勢に関するメッセージ」に触れ、「絶対非戦」を提唱した庭野日敬開祖の願いに言及。「戦争という悲惨な状況を二度と繰り返してはいけないという開祖さまの強い決意とサンゲの念が『絶対非戦』に込められている。国が間違った方向に進もうとしている時に、宗教者が役割を果たしていかないといけない」と述べた。
献水の儀を行った男性(80)は、3歳だった原爆投下時を振り返り、「黒い爆風で体が吹き飛ばされ、その威力はすさまじいものでした。献水の儀では、原爆で亡くなった親戚が安らかに眠れますようにと祈りを込めました」と語った。