諸宗教対話は世界で友愛と平和を促進していくための大道――教皇(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは6月30日、バチカンで「ユダヤ教国際委員会諸宗教対話部門」の使節団と個別謁見(えっけん)してスピーチする予定だったが、右膝関節痛の激化により中止となった。教皇のスピーチは、バチカンのキリスト教一致推進省長官のクルト・コック枢機卿を通して、ユダヤ教指導者たちに伝えられた。

この中で教皇は、「不理解、相違、紛争を解決するため、攻撃的な態度ではなく、偏見を持たない平和的な意向を持って、皆に受け入れられる合意点を見いだしていくように」と訴えた。なぜなら、「憎悪と暴力は、私たちの信仰と相いれない関係にある」からであるとし、さらに、ユダヤ教徒とキリスト教徒は、「私たちの父であり、創造主である神に倣い行動しなければならない」と呼びかけ、歴史の中で繰り返され、今も続く抑圧や迫害は「神の似姿」とはほど遠い、との確信を表明した。

ここで、教皇は「カトリック教会の、家庭、小教区共同体、学校、信徒組織を通して教育的な予防活動を行い、あらゆる形で反ユダヤ主義に対抗していく」と誓った。また、「揺れ動く現代」において、ユダヤ教徒とキリスト教徒のさらなる対話の必要性を強調。そうした対話を通し、「利己主義や拝金主義、強い個人主義、無関心、使い捨て文化といった、西洋社会のネガティブな潮流にも対処していかなければならない」と訴えた。

また、諸宗教対話が「現代世界における時のしるし、神の摂理」であるようにと願い、「宗教的な違いを尊重しながら、私たちが出会い、知り合っていくことを、神自身がインスピレーションしてくださったからだ」と主張。「諸宗教対話は、世界で友愛と平和を促進していくための大道」と訴え、「対話を強化することで、諸宗教内にはびこる過激主義に対抗していける」との確信を明かした。

ユダヤ教国際委員会諸宗教対話部門は、1970年に創設され、米国を拠点に多くのユダヤ教系組織を通して世界で諸宗教対話活動を推進している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)