熊本地震から1年 柴垣多加志・熊本教会長に聞く

柴垣・熊本教会長

昨年4月に発生した熊本地震から1年が経つ。最大震度7を記録した益城町はじめ南阿蘇村や熊本市など、被害の大きかった県北部を包括する熊本教会の柴垣多加志教会長に、この1年の歩みと現在の状況、今後の取り組みについて話を聞いた。

相手を否定せず、話を聴くことで思いを寄せ合う

熊本地震から1年を迎えました。「もう1年か、あっという間だった」というのが今の率直な思いです。

震災直後、教会道場には、被災した会員さんと地域住民の方が避難されていました。緊急対応に当たりながら、教会では午前6時と9時のご供養、さらに法座を毎日行いました。時には、導師一人だけのご供養ということもありましたが、教会や地域道場は、会員にとって「わが家」みたいなものですから、いつもいるべき人がいて、あるべきことが行われているということが安心につながると思ったからです。「ご供養ができる」「法座が行われている」。そうした声を聞いて教会に足を運び、つかの間でも平常を取り戻された方は少なくありませんでした。

本震発生から2カ月が過ぎた頃から、支部長さんや主任さんが中心となって全会員宅を訪ねてくださいました。じかに話を伺い、それぞれの被害状況を知ることができました。「いのちがあって良かった」。震災直後から、教会に来られた方をそうお迎えして、日々を過ごしたことが今も思い出されます。

地震の爪痕は今も(益城町)

今年2月末日現在、13世帯の会員が仮設住宅で、31世帯の会員が「みなし応急仮設住宅」(自治体が民間賃貸住宅を借り上げて提供)で暮らしています。仮設住宅、みなし応急仮設住宅ともに、入居期間は最長2年と定められており、経済的に大変な高齢の方などは、1年後の生活に不安を募らせています。このほか、自宅に住めなくなり、わが子や親戚の所に身を寄せている人もいます。自宅の再建がかなった人も新たにローンを組むわけですから、大変であることに違いはありません。

この1年、「相手の話を否定せず、じっくり聴かせて頂く」ことを教会全体で大切にしてきました。苦しい胸の内、悩み、不安を吐き出して、互いをいたわり、思いやり、認め合って共に進んでいきたいとの願いからです。

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