「バルトロメオ一世がサウジアラビアを訪問」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
正教会のコンスタンティノープル(現トルコ・イスタンブール)・エキュメニカル総主教であるバルトロメオ一世は5月11日、サウジアラビアのリヤドを訪問し、アーディル・アル・ジュベイル外務担当国務大臣と懇談した。サウジアラビアの日刊紙「サウジ・ガゼット」が同日に報道した。
両指導者は、「サウジアラビア王国の、恒常的で包括的な平和、寛容の文化、諸宗教と諸文化間における対話促進へ向けての努力について考察した」という。また、同国によるテロ、暴力、過激主義の拒否にも話が及んだ。懇談には、「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)事務局長を務めていたファハド・アブアルナスル外務担当副大臣も同席した。
同総主教の訪問は、同国のメッカを拠点とする「ムスリム世界連盟」が主催する「諸宗教の信徒間における共通価値を促進するための国際会議」でスピーチすることが目的。ギリシャの「オーソドックス・タイムズ」は同12日、同総主教の発言内容について報じた。
この中で、同総主教は、「宗教の本質的役割が平和の構築にある」と強調しながら、その役割を常に追求することが「宗教の義務であり、そのための展望、努力、闘い、犠牲と忍耐が要求される」と説いた。
また、「世界の主要な諸宗教の伝統が、平和構築に対する尽きることのない可能性を秘めている」との確信を表明。その上で、可能性だけでは十分でなく、「私たちが平和を実践し、そのために協調しなければならない」と呼びかけた。
正教会の役割については、「平和の構築に貢献する、あらゆる純粋な努力を奨励していく義務がある」と説明。そのためには、「正義と友愛、真の自由、そして、人類一家族を構成する諸国民間で、相互愛への道を開拓していくことが大切」であり、なぜなら、「正教会は、世界各地で平和と正義を剝奪され、享受できない人々と共に苦しむ」からであると訴えた。
「オーソドックス・タイムズ」は、同総主教のスピーチがロシア軍によるウクライナ侵攻から約2カ月半後に行われたことを指摘。ウクライナでは正教会の諸教会が爆撃され、キリスト教徒を含む多くの一般市民が殺害されたにもかかわらず、「侵攻を“祝福”し、説教で平和の促進を説かないキリル総主教(ロシア正教会最高指導者)の立場と真っ向から対立する」とコメントした。
バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」は同13日、同会議に、バチカン、福音教会(プロテスタント)の指導者、国際的に著名なラビ(ユダヤ教指導者)、ヒンドゥー教の指導者、有識者らが協賛したと報道。同連盟のムハンマド・アル・イーサ事務総長、バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿、バルトロメオ一世、キリスト教指導者会議議長のジョニー・ムーア牧師、ウクライナ正教会のイヴァン・ゾリア大主教らが参加したと伝えた。
また、同会議が公表した宣言文の中で、「世界の霊的指導者間の協力と信頼を強化していくために、共通の文明という枠内での普遍的合意を成立させる」という開催の目的が記されたことに触れ、同会議を通して、共通する人間の価値という原則を尊重し、「穏健と調和の価値を促進することで寛容と平和を進展させ、イデオロギーや過激主義に抵抗する能力を高めていく知的、理性的な枠を定めていった」と報じた。
さらに、宣言文が「社会の核」としての「家庭の結束」を重要視し、国連などの国際機関に対して「家庭の擁護と子供たちの教育の促進」を訴えたとも伝えた。
なお、同会議では、「人間に共通する価値についての百科事典」の編纂(へんさん)企画が開始されたという。