WCRP日本委 『ウクライナ危機の打開に向けて』テーマに学習会 上智大学大学院の植木教授が講演

植木氏は、国際社会が協力して非人道的な行為に抗議の声を上げることが重要と強調した(「Zoom」の画面)

『ウクライナ危機の打開に向けて――様々な信仰を持つ市民の行動と連帯』をテーマに世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会による学習会が4月9日、オンラインで開催された。WCRP/RfP国際トラスティーズ・日本グループ(通称=WCRPジャパニーズトラスティーズ)、国際自由宗教連盟(IARF)日本チャプターが共催し、アジア宗教者平和会議(ACRP)東京事務局が後援。約500人が参加した。

同学習会は、ウクライナ紛争の現状を理解し、和平に向けた信仰者の行動を考えるもの。当日は、WCRP/RfP日本委の黒住宗道理事(黒住教教主)の開会挨拶に続き、上智大学大学院の植木安弘教授が『ウクライナ危機への国際社会の対応と市民の役割』と題して講演した。

この中で植木氏は、世界の平和と安定に向けて責任を担う国連安全保障理事会(安保理)の常任理事国であるロシアが、武力による威嚇や行使を禁じる国連憲章を自ら踏みにじった今回の行為は、「国連が機能不全に陥り、役に立たないのではという印象を国際社会に与えた」と指摘した。一方、国連総会の緊急特別会合で、ロシアの行為を非難する三つの決議が、いずれも賛成多数で採択された意義を強調。この採択には法的拘束力がないものの、力による一方的な現状変更を許さないという国際社会の意思を世界に示す非常に重要な役割を果たしたと語った。

また、国際刑事裁判所(ICC)は「最も重大な犯罪」にあたる「集団虐殺(ジェノサイド)」「人道に対する罪」(民間人への拷問や暴行)、「戦争犯罪」(病院や学校など軍事目的ではない施設への攻撃)、「侵略犯罪」(侵略行為の計画や実行)を犯した容疑で、軍事侵攻を主導したプーチン大統領の捜査を始めたことを紹介。ロシアはICC非加盟国で、現状では大統領であるプーチン氏の逮捕は難しいが、これらの犯罪には時効がなく、大統領退任後にICC加盟国に渡航した際などに拘束し、訴追できる可能性があると述べた。

植木氏は、市民社会の役割にも言及。祈りの集会などを通じてウクライナ紛争の終結と和平の実現を祈り、SNSなどを使って反戦や停戦を訴えて、ウクライナの人々を精神的にサポートしていくことが大切と強調した。また、資金は物資と比べて素早く送ることができ、その資金を使って必要な物資を現地や近隣地域で調達することで経済を活性化させる効果もあるとして、国際機関やNGOなどの募金活動への協力も「重要な支援になる」と語った。

この後、約30年にわたってウクライナで布教活動に取り組む日本山妙法寺の寺沢潤世僧侶が、ロシアの軍事侵攻が始まった直後の様子を現地から報告(録画映像)。続いて、「諸宗教パネルからの応答」としてWCRPジャパニーズトラスティーズの田中常隆代表、WCRP/RfP国際委員会の杉野恭一前副事務総長、IARF日本チャプターの杉山利予氏が発表した。この中で、募金による資金援助、停戦に向けた諸宗教ネットワークの取り組みなどが紹介された。

共催団体の代表者による質疑応答も行われた。