庭野会長「朔日参り(布薩の日)」式典で法話 思いやりの実践通し心を磨いて

法話に立った庭野会長は、慈悲や思いやりの実践を通して心を磨いていく大切さを説いた

4月1日、立正佼成会の「朔日(ついたち)参り(布薩=ふさつ=の日)」式典が東京・杉並区の大聖堂で行われ、庭野日鑛会長が法話を述べた。式典の様子は、インターネットを通じて全国の会員にライブ配信された。

式典では、庭野光祥次代会長を導師に読経供養が行われた後、川越教会支部壮年庶務(77)が体験説法に立った。

壮年庶務は11年前に「下顎(かがく)骨肉腫」と診断され、手術をしても永久気管切開となり社会復帰は難しいと宣告されながら、サンガ(教えの仲間)の祈りと家族の支えの中で抗がん剤治療、そして成功率3%という厳しい手術を乗り越えた体験を詳述。治療や日常生活で不安を感じるたびに、夢枕に立った庭野日敬開祖から慈悲の言葉をかけられたことで心が定まり、転移もあったが治療を諦めず、今では自力で発声し、食事もできるまでに回復した歩みを語った。

大病の経験から、問題が起きた時だけ手を合わせる自己中心な信仰を見つめ直し、目の前の全ての出来事を仏の慈悲と受けとめ、一日一日を大切に生きようと思えるようになった心の変化を述懐。これからは、会社員時代の経験を生かし、教会行事の記録やデータ整理など、自分にできるお役に励みながら、人さまの救われに寄り添っていきたいと誓願した。

法話に立った庭野会長は、日頃のあいさつの重要性に言及し、互いを人間として尊重し合うところにあいさつが成り立つと説示。常不軽菩薩の礼拝(らいはい)行や日蓮聖人の言葉を挙げながら、日頃の人への振る舞いが大切であり、合掌礼拝に法華経の精神が表れていると説いた。

また、人間が何億年という生物的生活の果てに文明を作り出し、精神や道(どう)といわれる人間らしい心が出来上がったと説明。心とは、知性だけでなく情も含まれており、慈悲や思いやりを大事にして心を磨いていくことが重要であると同時に、仏教で「身心」といわれるように身も心も一つとして整えていくことが大切と示した。

さらに、「大自然も宇宙も、私たちと一つなのだということを気づかせるために、心というものがつくり出されてきた」と述べ、心を働かさなければ「人類は一つ」といったことも分からないと教示。慈悲や愛、仁といった宗教の核心を理解していく先人の一つの智慧(ちえ)として、道元禅師が自分以外の人のことを「他人」ではなく「他己(たこ)」と呼び、自他を区別せずに全て「己(おの)れ」と受けとめたことを紹介した。「この世の全ての物事を、自分自身の問題と受け取れる人間になるよう心を磨いていくことが、本当の精進であります」と説いた。