核兵器禁止条約制定を求める声明発表 WCRP/RfP日本委
(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
「核兵器なき世界」の実現に向けて
3月の核兵器禁止条約交渉会議の成果を歓迎する声明
2017年3月31日、国連で開催された核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の前半の交渉会議が終了した。WCRP日本委員会は、この3月の交渉会議が以下の通り有意義な成果をもたらしたものとして、歓迎の意を表明する。
第一に、国連加盟国の115カ国以上が参加し、核兵器の非合法化に向け実りの多い前向きな議論が行われたこと自体が歴史的であり画期的なことである。会議の議長を務めたコスタリカのエレイン・ホワイト軍縮大使が、6月からはじまる後半の会議で禁止条約の採択を明言したことに表れているように、建設的な議論が行われ、核兵器禁止条約制定の道筋が見えてきたことは大きな希望をもたらすものである。
第二に、広島、長崎をはじめとする被爆者の方々が中心となって訴えてきた核兵器の非人道性への認識がさらに広がり、核兵器禁止条約の確固たる思想・理念として定着されてきたことである。多くの国が核兵器のもたらす壊滅的な人道上の影響と、誰もが制御できないリスクに言及したことがそれを証明している。被爆者として発言した藤森俊希さんの「被爆者の訴えが条約に盛りこまれ、世界が核兵器廃絶に力強く前進することを希望する」とのスピーチに呼応するように、条約の前文に『ヒバクシャ』の言葉が明記される見通しになったことは、被爆者の苦しみに触れることによって核兵器の非人道性がより明確に浮き彫りにされたといえる。
第三に、核兵器禁止条約の具体的な内容の議論もされたが、各国政府代表のみならず被爆者、宗教者、NGO等の市民社会、専門家などが参画し、従来よりも、より開かれた会議であったことも成果といえる。核兵器の問題は一人ひとりのいのちの問題であり、同時に人類全体にかかわることであるので、国益を超えた議論が不可欠である。建設的な議論が行われた今回の会議の背景には、これまで比較的限られた中で行われてきた核兵器の議論に、多様な意見が表明され尊重されたことがある。
しかしながら、日本政府が此の度の交渉に参加しなかったことに対し、WCRP日本委員会は深く失望の意を表明する。又失望したのは私達のみならず多くの国民であることを確信するものである。日本政府は「日本は唯一の戦争被爆国」として核兵器のない世界の実現への使命を謳いながら、「核保有国と非保有国との橋渡しをする」ための「現実的な取り組みを積み重ねる」という理由をあげ、交渉に参加しないことを正当化しようとしている。これは核廃絶を願う唯一の戦争被爆国の態度として大変理解に苦しむことであり、核廃絶を願う国際世論の期待を裏切ることになると深く憂慮する。
人類は現実に15,000発以上もある核兵器の脅威に晒され、放置しておけば核は拡散し危険度が一層増していくことは自明の理である。この事実を直視すれば交渉のテーブルに着くことこそ最も現実的な姿勢であると、強く訴えるものである。
さらに核兵器禁止条約は、核兵器保有国はもちろん、核の傘に依存する国、非保有国もすべて同じ立場に立脚しながら忍耐強く、その目的に向かって進めていかなければならない人類共通の課題であることを認識すべきである。
WCRP日本委員会はWCRP国際委員会と共に、NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」と合同で、「核兵器禁止条約交渉ハンドブック」を作成し、各国政府関係者などに禁止における法的拘束力の有用性や核兵器の非人道性に対する直視の必要性を訴え、核兵器禁止条約制定を求めてきた。この度の会議は、これまでWCRPが訴えてきた「核兵器なき世界」の実現に向け、大きな前進となるものと期待している。さらにWCRP日本委員会は、WCRP国際ネットワークと共に、この核兵器禁止条約交渉に日本政府ならびに核保有国が参加し、誠実に議論されていくことを求めると共に、引き続き「核兵器なき世界」の実現に向けて祈りと行動を行うものである。
2017年4月7日
(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
理事長 杉谷義純