WCRP日本委「平和大学講座」 コロナ後の共生社会を考える

基調発題者の岩村牧師(中段左)とパネリスト。コロナ禍後の宗教組織、宗教者の役割について議論した(「Zoom」の画面)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の「平和大学講座」が3月10日、オンラインで行われた。テーマは『宗教はコロナ後の共生社会をどう目指すか』。各教団の宗教者や賛助会員ら約200人が視聴した。

講座では、植松誠理事長(日本聖公会主教)の開会挨拶に続き、一般社団法人神戸国際支縁機構理事長を務める神戸国際キリスト教会の岩村義雄牧師が基調発題を行った。

この中で岩村牧師は、『聖書』に説かれているキリスト教徒の公的権力との向き合い方を紹介し、新型コロナウイルス感染症が流行して以降の世界各国と日本の現況に言及した。先進国では、流行直後から、政府がワクチン開発を主導した国もあったほか、各国ではワクチン接種やロックダウン(都市封鎖)、PCR検査を集中的に実施して感染防止策が積極的に行われたと報告。一方、日本はワクチンの開発支援も十分でなく、当初は接種も遅れ、PCR検査数は各国よりも少ない状況が続いていると指摘した。感染者を隔離して感染を防止する政策や医療体制の確立も不十分で、何度も感染者が急増して医療機関がひっ迫するなど対応が後手に回ってきたと説明した。

こうした状況が続く背景として、首相や政府といった国家のエクスーシア(権威)がそれまでの政策を省みて方針を転換できないことや、責任を取ろうとしないことが原因と指摘。立法・司法・行政に次ぐ「第四の権力」として、政治を監視するマスメディアも十分な役割を果たせずにいる現状や、市民社会の政治への関心低下も要因と語り、市民生活をよりよいものにしていく役割のエクスーシアが誤導を続ける限り、「日本は瀬戸際に立たされていく」と警鐘を鳴らした。

その上で、こうした現状を好転させるには、一人ひとりが愛や善行といった精神的、道徳的な「徳」を身につけていくことが重要になると述べた。また、徳はエクスーシアを超えた普遍的な価値であり、宗教が説いてきたものでもあると強調。徳を備えることで間違いを認めて、悔い改めることができ、苦しみや悲しみの中にある人に寄り添うことができるとし、その広がりによって社会が善い方向に向かうと語った。

さらに、宗教者が語る「共生」とは、生物学上の「生命」だけでなく、それを包み込んでいる目に見えないつながりや働きを含んだ「いのち」を大切にし、互いの存在を尊んでいくことと説明。共生社会の実現に向け、「徳や(宗教的)共生といった価値観を有する宗教者から(価値の)視座を転換し、多くの人と連帯を深めて歩んでいきたい」と述べた。

この後、天理大学おやさと研究所の金子昭教授、真宗大谷派教学研究所の御手洗隆明研究員、WCRP/RfP日本委平和研究所の安勝煕研究員(同日本委平和推進部長)によるパネルディスカッションが行われた。東洋大学の竹村牧男名誉教授が進行役を務め、コロナ禍後の宗教組織のあり方や宗教者の役割などについて意見が交わされた。