WCRP国際委、日本委がウクライナ情勢に対し声明

WCRP/RfP日本委のウェブサイトに掲載されている声明のバナー

2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、市民を含めて多数の犠牲者が出ているほか、多くの避難民が発生する事態となっている。こうした情勢を受け、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会は同28日、『ウクライナ紛争に関する声明』を発表した。また、3月2日には同日本委員会が植松誠理事長(日本聖公会主教)名の声明を公表した。

国際委員会の声明は、非暴力による解決と戦争放棄に向けたWCRP/RfPの強い意志を示すため、欧州宗教指導者評議会のメンバーが中心となり、各地域委員会の意向を踏まえて作成された。

声明では、平和への深い宗教的信念に基づき、いかなる暴力も断固として拒否する意向を表明し、暴力的な紛争は決して建設的な結果をもたらさないと強調。今回の軍事衝突に反対するとともに、紛争に巻き込まれた一人ひとりのために心から祈りを捧げることを明示した。

また、暴力は暴力を生むとした上で、ロシアとウクライナの各宗教宗派の信者に向けて、全ての宗教の根本的な目的を思い出し、共に平和を求めて立ち上がり、声を上げるように呼びかけている。政治指導者に対しても、人間の命の尊さを思い起こし、この無意味な暴力を直ちに停止するよう求めている。

さらに、国際委員会は諸宗教人道支援基金を使って、避難民を援助する諸宗教の取り組みの提案を募集すると表明した。

一方、日本委員会は『ウクライナ情勢に対する声明』の中で、ロシアの侵攻によって多くの命が失われ、多数の市民が厳しい避難生活を余儀なくされていることに深い憂慮を示した。紛争によって犠牲となるのはいつも無辜(むこ)の市民や、弱い立場の人々であると指摘し、武力の行使は新たな憎悪を生み、報復の連鎖を招く愚かな行為と警鐘を鳴らした。

また、今回のロシアの軍事侵攻、さらに核兵器使用を示唆する行為は、「世界を破滅の道へと導くもの」であり、被爆者の核廃絶への思いを踏みにじるだけでなく、平和を願う世界の人々の良心を裏切る行為と明言。改めて「核兵器使用絶対反対」を強く訴えた。

その上で、即時停戦と暴力の抑止、対話と交渉による平和的解決に向けた関係各国・各機関の取り組みを要請。日本委員会は「いのちの平等なる尊厳性」を認識し、平和と人々の心の安寧が一刻も早くもたらされるよう祈りを捧げるとともに、世界の人々と連帯し、和平に向けた対話と人権尊重に基づく人道支援を実施するとしている。

ウクライナとロシアの関係

旧ソビエト連邦(ソ連)を構成した15共和国の一つだったウクライナは1991年、旧ソ連の崩壊に伴い独立した。以降、親ロシア派が政権を担い、民主化を進めてきたが、欧州に近い西部の親欧米派と、ロシア系住民が多く住む東部の親ロシア派との対立が続いてきた。

2005年に親欧米政権が誕生すると、西側諸国との結びつきを強め、欧州連合(EU)や米国主導の軍事同盟「北大西洋条約機構」(NATO)への加盟を目指す動きを見せた。これに対してロシアは、NATOの東方拡大に警戒感を募らせ、圧力を強めていった。

14年、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領がEU加盟を見送ると反政府デモが起き、政権が崩壊。親欧米派政権の発足後、ロシアがウクライナ南部に軍事介入し、クリミア半島を一方的に併合した。

その後も両国間の緊張が続き、今年2月21日には、親ロシア派勢力が実効支配しているウクライナ東部ドンバス地域のドネツク、ルガンスク両州の独立をロシアが一方的に承認。さらに、ウクライナ国内に住むロシア系住民の保護を名目に、同24日、ウクライナに軍事侵攻した。