〈ひと〉書評ゲーム「ビブリオバトル」の高校生全国大会に出場した 佼成学園高2年の山口春樹さん(16)

1月23日、東京・新宿区の早稲田大学で行われた「第8回全国高等学校ビブリオバトル決勝大会」(主催・活字文化推進会議)に東京都代表として出場した。

ビブリオバトルとは、自分の「お気に入り」の本の魅力を紹介し合う書評ゲーム。出場者による発表、ディスカッションの後、参加者全員が最も読みたくなった本に投票し、チャンプ本(優勝)を決める。本に親しみ、人とのコミュニケーションを図る場として学校教育などにも取り入れられている。

「発表では台本を使わず、自分の言葉で思いを伝えます。そのため、本の紹介に皆の人柄が見えてくるのが面白い」

幼い頃、母に多くの絵本を読み聞かせてもらったことで読書好きに。小学6年生の時、授業の一環で初めてビブリオバトルを体験し、同級生の前でファンタジー小説『ハリー・ポッター』を紹介した。「友達も物語に興味を持ってくれて、一緒に語り合えたのがうれしかった」。

今も、本を通じて交友を深める。本の内容を伝えるため、文章を深く読み込むようにもなった。中学や高校でも校内のバトルに参加した。昨年11月、高校生の東京都大会に初挑戦し、120人中、準チャンプ本(準優勝)を獲得。全国大会への切符を手にした。

今回発表した本は、乙野四方字(おとのよもじ)氏の小説『僕が愛したすべての君へ』(早川書房)。物語の主人公・高崎暦は、現実世界と並んで存在する並行世界(パラレルワールド)を行き来する中で、〈本当の自分とは何か〉と葛藤しながらも、自らの生き方を選択していく。

「現実でも、あの時、別の道を選んでいれば今とは違う世界になっていたと思うことがあります。でも、主人公・暦の姿を通して、今の自分はたくさんの選択の上に存在するのだと実感し、“今の人生を大切にしよう”と思えました」

全国大会では、同書からの学びをアピール。担任の教諭らから「共感を得ることが大事」とのアドバイスを受け、話し方やジェスチャーにも工夫を凝らした。惜しくも予選ブロックで敗退したが、「皆さんの素晴らしい発表を聞いて、読みたい本が増えました」と語った。

今後は受験勉強に専念。大学進学後に再びビブリオバトルに挑む。