IPCR国際セミナー WCRP日本委の植松理事長が出席
韓国宗教平和国際事業団(IPCR)の国際セミナーが1月20日、日本、中国、韓国をオンラインでつないで開催された。各国の宗教者ら約50人が参加。日本から世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の植松誠理事長(日本聖公会主教)、篠原祥哲事務局長らが出席した。
同セミナーは、日中韓の宗教者や研究者らが集い、東北アジア平和共同体の構築に向け、具体的な方策や諸課題の解決について議論するもの。『東北アジア平和共同体構築のための課題』を総合テーマに2009年から毎年開催されている。
開会式では各国の代表があいさつ。この中で植松理事長は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって、経済格差、不平等、環境破壊といった世界の諸問題が改めて浮き彫りになったと述べ、今こそ、これらの課題解決に取り組む宗教者の姿勢が問われているとして、同セミナーを通じた宗教者の対話と協力に期待を寄せた。
この後、『人新世と宗教の役割』『地理政治の複数の衝撃の下での東北アジアの宗教と地域の平和』『コロナと環境』をテーマにそれぞれ会合が開かれた。
『人新世と宗教の役割』の会合では、同日本委の山本俊正理事(元関西学院大学教授)が基調発題を行った。山本師は、資本主義社会は、人々の欲望を刺激して消費を喚起し、経済成長を持続させることで成り立っている以上、その中で技術革新をしても経済成長が優先されるため気候変動危機の解決は難しいと論じた『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著、集英社)の内容を紹介。諸課題の解決に向けて、「問われているのは私たちの生き方であり感性」と強調した。
その上で、キリスト教では、労働には神から授けられた宗教的使命としての意味もあり、その対価として受け取る富は神の恵みとして無駄に消費せず、社会に還元して他者と分かち合うべきとの考え方があると詳述。地球環境の再生に向け、宗教者は他者への慈愛の精神、大いなる自然に対する畏れといった倫理的な価値観を人々に伝え、人間の生き方や価値観を転換させる役割があると述べた。
これを受け、パネリストの同日本委平和研究所の松井ケティ所員(清泉女子大学教授)、中国宗教者和平委員会(CCRP)の然教委員(北京仏教協会副事務総長)らが見解を発表。自然環境の公共性、「自利利他の精神」による欲望の抑制などについて意見が交わされた。