大聖堂で「御親教」式典 庭野会長 『素心』『和言』に込めた願い示す (動画あり)
年頭にあたり、一年の修行精進の指針として庭野日鑛会長が法話を述べる立正佼成会の「御親教」式典が1月7日、大聖堂(東京・杉並区)で行われた。会員は参集せず、式典の映像がインターネットで会員向けにライブ配信された。「御親教」の中で庭野会長は、書き初めに揮毫(きごう)した『素心(そしん)』『和言(わげん)』の意味合いを明示。『素心』については、心を大切にし、自然のまま、人間そのものの純真な心で全てのものを見て、学びを深めることが重要と説き示した。
自然のまま、人間そのものの純真な心でものを見て、和やかに言葉を交わす
式典は東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の序奏で始まり、国歌・会歌の斉唱に続き、庭野光祥次代会長を導師に読経供養が行われた。
年頭挨拶に立った國富敬二理事長は、「法燈継承」以来、庭野会長は一貫して「簡素」をテーマに教えを説いてきたことを紹介。「簡素」とは、「省くものは省き、大事なものを見極めること」とした上で、自分自身、家庭で教えを実践し家を斉(ととの)えるとともに、楽しく生き、太陽のようにその“光”を周りの人に伝えることを大事にして精進したいと語った。
続いて、光祥次代会長が新年の挨拶を述べた。この中で光祥次代会長は、本会の特徴は、法華経に顕現された真実を学び、教えを基に現実の社会で生きていくこと(立正)、人と交わり、縁を結んでいくこと(佼成)にあると説明。特に「佼成」の大切さに触れ、自分の中にあるさまざまな思いにきちんと向き合いながら、人と出会うことで「本当の意味でご縁が結べる」と話した。
さらに、人と出会うことでの大変さや喜びを実際に味わうことで、教えを知識として学ぶだけにとどまらず、「教えを生きる」ことができると強調。「法華経を生きている人とご縁を結べることが佼成会の一番の魅力」として、「人生を法華経し、法華経を人生する。そのような私たちでありたい。そのことを一歩でも進められる一年にしたい」と述べた。
次いで、文京教会支部長(56)が「決意の言葉」を発表した。支部長は、勤務先の先輩に導かれて入会し、青年部活動を通して知り合った夫と結婚したことを述懐。その後、乳がんを患ったが、『法華三部経』の読誦(どくじゅ)を励みに苦しい闘病を乗り越えた体験を語った。また、離婚後、高校生だった長男が不登校になったことを通して、親子で読経供養をするようになり、心を通わせながら親子の絆を深められた喜びを述べた。
さらに、3年前に支部長を拝命し、コロナ禍における教会の取り組みとして支部の会員と手紙を交わしていることを紹介。サンガ(教えの仲間)一人ひとりの文面から日頃の感謝の思いが伝わり、感動していると語った。続けて、会員たちとの救い救われの触れ合いも報告しながら、今後も多くの人の救われを目指して布教伝道に邁進(まいしん)することを誓った。
この後、庭野会長が「御親教」に立った。庭野会長は、聖壇上に掲げられた『素心』『和言』の書き初めに込めた思いを披歴。「素心」の「素」には、自然のまま、生まれつきの性質という意味があり、地位や名誉など世間的な色付けに染まらない、人間そのものの純真な心が「素心」であるとして、「そうした心で今年はいろいろなものを見たり、聞いたり、学んだりしていきたい」と抱負を語った。
また、「和言」とは、和やかにものを言うことと説明。特に家族に対しては穏やかに話せず、つい、けんか腰になってしまうことも多いものであるとして、家庭の中でこそ皆が和やかにものを言うことが大切と説いた。
その上で、人の心について述べた栄西禅師の言葉を紹介。天の高さは極め尽くせなくても、心はその天の上にさえ出ることができる、大地の厚さは測り尽くせなくても、心は大地の下深く行き着くことができるといった、心の働きの偉大なさまを表現した内容を解説し、人間は心があるからこそ、天地や日月、四季の運行なども知ることができることを説示した。
さらに、仏教学者の言葉を引用する形で、「仏になる」とは、人間の心に潜む仏性を自覚することであり、日常生活がそのまま仏道修行であって、それが同時に仏の衆生救済の活動でもあるとの説を示した。法華経に説かれる「即是道場(そくぜどうじょう)」(この処は即ち是れ道場なり=このところはすなわちこれどうじょうなり)も同じであり、家庭で親が子供を育てたり、人と交流したりすることなど全てが仏道修行であるとともに、仏の衆生救済の活動であるとして、改めて日常生活の大切さを説いた。
加えて、科学的知見を引用しながら、太陽や宇宙の働きのおかげで人間も植物も動物も皆、生かされていることを詳述。そうしたことが分かるのも人間に心があるからとした上で、「『素心』という真っ白な心で見て、私たちが生かされていることがいかに不思議で有り難いことであるか、今年一年しっかりと、お互いさまに学んでまいりたい」と述べた。