憧れの佼成ウインドと共演で 作曲家・真島俊夫氏の秘密を探った「吹奏楽大作戦」

TKWOから演奏指導を受ける市民たち

全国の吹奏楽部やアマチュア楽団が目指す夢の舞台、「全日本吹奏楽コンクール」の全国大会。中学、高校、大学、一般・職場の4部門があり、全国大会は「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる。

その「全日本吹奏楽コンクール」では課題曲が提示され、2年おきに大阪の楽団と交代で課題曲の参考演奏を行っている東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)は、大会を目標とする人々の憧れの吹奏楽団だ。

「日本の吹奏楽を象徴するプロ吹奏楽団」とも評されるTKWOと共演できる演奏会「吹奏楽大作戦」が4月2日、東京芸術劇場で行われた。

今年は全国から約160人の応募があり、中学生から64歳の年配者まで男女88人が選ばれた。当日は10曲が演奏され、そのうち5曲は、抽選で選ばれた学生や音楽愛好家とTKWOにより奏でられた。

選出された参加者は事前に2日間、TKWOのメンバーからレッスンを受け、舞台に臨んだ。テナーサクソフォンを担当した亀谷聡さん(63)は、「TKWOの大ファンで、演奏会に何度も足を運んでいます。メンバーの方に直接教わることができて、感激です」と満面の笑みで語った。

TKWOは「憧れの存在」と口をそろえるのは、今回、指揮を担った平山博通さん(41)=会社員=と佐藤佑哉さん(20)=大学生=の2人。TKWO正指揮者の大井剛史氏から曲の捉え方、演奏者とのコンタクト、練習方法など専門的なノウハウを教わった。演奏者との練習では、大井氏が手を添えて、直接指揮の仕方を指導する場面も見られた。

平山さんは、「私が中学校の吹奏楽部員の頃から、佼成さんはコンクールの課題曲を演奏されていたので、憧れの芸能人に会うような心境です。アマチュアの自分が、1曲フルに、プロのオーケストラを指揮できる機会なんて、一生に一度にあるかどうか……。こんなすてきな企画は佼成さんだけです。めちゃくちゃ楽しいです」と、興奮気味に話した。

TKWOと参加者との共演

聴衆1020人を前に迎えた本番。平山さんは「五月の風」を、佐藤さんは「コーラル・ブルー 沖縄民謡『谷茶前』の主題による交響的印象」を指揮し、観客席から盛大な拍手が送られた。演奏会の後半では、市民参加のアルトサクソフォン奏者をコンサートミストレスに、市民参加者、TKWO、総勢135人による大合奏が繰り広げられた。

数々の吹奏楽曲を手掛けた真島氏を偲んで

TKWOの演奏、市民との共演が行われた今回の「吹奏楽大作戦」のテーマは、『Mの秘密』。吹奏楽向けの作曲、編曲を数多く手掛けた真島俊夫氏のイニシャル「M」にちなんだもので、当日の曲目は全て、真島氏によって作曲、編曲された曲で構成された。

TKWOと真島氏との親交は深く、当日にも演奏された「地球―美しき惑星―」はTKWOのために真島氏が作曲したものだ。昨年、真島氏は逝去し、演奏の合間にメンバーから心に残る思い出のエピソードが語られた。

真島俊夫氏の妻・匡子さん(右)

真島氏の妻の匡子さんも特別ゲストとして参加し、市民と共にレッスンも受けた。当日は、打楽器奏者として舞台に立ち、TKWOと夫にまつわる思い出や、今演奏会の開催に対する感謝の言葉を述べた。