WCRP創設50周年記念式典・シンポジウム 『Our Heart for All Beings~宗教協力の新たな扉~』をメーンテーマに (動画あり)

WCRP日本委員会 庭野会長挨拶(要旨)

平和へ 身近な行動を重ね、絶えざる創造を

ここ国立京都国際会館のメインホールは、「第1回世界大会」の開会式が開かれた会場であり、いわばWCRP(世界宗教者平和会議)発祥の地であります。只今(ただいま)、創設から50年の歩みを映像でご覧頂きましたが、私どもが今日を迎えることができましたのも、多くの先達の方々が、道なき道を切り拓(ひら)き、礎を築いてくださったお陰さまであることを、改めて深く心に刻ませて頂きました。

1968年1月、インドでマハトマ・ガンジーの生誕百年を記念する国際シンポジウムが開かれ、その帰路、アメリカの宗教者が日本を訪れて、「平和についての日米諸宗教者京都会議」が開催されました。会議の席上、宗教者による世界会議の開催が合意され、翌年トルコで開かれた「国際宗教者会議」において、1970年秋、京都で「第1回WCRP世界大会」を開くことが決定されたのであります。

開会挨拶に立った庭野会長。WCRP/RfPの創設に尽力した先達に敬意を表し、世界の諸問題解決に向け身近な場で具体的な実践を行う重要性を語った

画期的な世界会議の開催に注目が集まりましたが、当時、日本の宗教界では、WCRPに対する評価や期待が必ずしも好意的ではありませんでした。世界大会の開催に向けた会議の中で、ある方は、「そのような会議をするなど反対だ」と憤然として席を立ち、会場から出ていかれたこともありました。その光景に触れ、私は、諸宗教者による世界会議の開催が、決して容易ではないことをつくづくと思い知らされたのであります。

そうした状況にあろうとも、数々の困難を乗りこえて、第1回世界大会の開催を実現させることができたのは、先達の方々の熱い情熱と、深い祈りがあったからこそのことであります。創設50周年記念式典にあたり、私たちは、いま一度、この原点に立ち返りたいと思います。そして、先達の崇高な願い、進取の精神を受け継ぐ決意を新たにし、現代にふさわしい新たな実りに結びつけていくことが、後進の者に託された使命であります。

諸宗教間の対話・協力は、いまや国際社会の安定を築く上で、最も現実的かつ重要なテーマの一つとなっています。WCRPは半世紀をかけて、その潮流をより大きく、確かなものにしてきました。とりわけ私どもが参加するWCRP日本委員会は、創設当初から、活発かつ多様な活動を展開してきました。現在も、核兵器禁止条約批准、気候危機、和解の教育、人身取引防止などのタスクフォースを立ち上げ、現実の諸課題に積極的に取り組んでおります。

これだけの規模の活動を持続的に推進してきた委員会は、他にあまり例がないのではないかと思います。日本委員会は、世界の宗教界に一つの規範を示してきたと申せましょう。

日本の俳句に、次のような一句があります。

「八月や六日九日十五日」

広島、長崎への原爆投下、そして終戦という忘れがたい日付が並んだ句であります。日本は、唯一の戦争被爆国であり、無差別な空襲によって国土が焼け野原となる戦禍を経験してきました。だからこそWCRP日本委員会の皆さまは、二度と戦争の惨禍を繰り返さず、全てのいのちが尊ばれる世界を築いていきたいという強い願いを抱きながら、活動してこられたのであります。

今後も、宗教者による活動はもちろん、政治、経済、国際機関、民間団体、マスコミなど、各界との連携を深め、より開かれ、より行動的なWCRP日本委員会を目指してまいりたいと思います。

中国の『淮南子(えなんじ)』という書物に、「行年(ぎょうねん)五十にして四十九の非を知る。六十にして六十化(け)す」という言葉があります。

五十歳になったら、それまでの四十九年の生き方を反省し、また新たな気持ちで再出発する。六十歳になったら、その歳(とし)にふさわしい変化を志す、という意味合いです。

五十歳、六十歳ともなれば、人間としてある程度出来上がってくる時期です。それでもなお新鮮さを失わず、進化をし続ける。それは、絶えざる創造ということであり、WCRPの歩みにも当てはまります。

「創造」という言葉を辞書で引くと、「それまでなかったものを初めてつくり出すこと」とあります。しかし、本来の「創造」とは、もっと身近なものではないでしょうか。

2018年、私は、WCRP日本委員会が、埼玉県所沢市で開催した「植樹祭」に参加し、加盟教団の皆さまと共に、ヤマザクラとコナラの苗木を植樹しました。このような身近な行動を積み重ねていくことが、本来の「創造」ではないかと思います。どんなに尊い願いや理念も、実際に一本の木を植えること、つまり身近な場で実践することから始まります。お互いさま、このことを常に心がけたいものであります。

世界では、新たな問題が次々と生じています。WCRPが、一層大きな貢献を果たしていけることを念願し、また世界のあらゆる出来事に思いを寄せ、情熱を失わずに前進していくことをお誓いして、開会の挨拶といたします。
(文責在編集部)