日本の進路を考える公開学習会 『国家と宗教、宗教ナショナリズムを問う』テーマに「政教分離の会」が主催

『安倍政権と政教分離――国家と宗教、宗教ナショナリズムを問う』をテーマに、「政教分離の会」による公開学習会が3月25日、東京・渋谷区の新宗連会館で開催された。宗教指導者ら50人が参加した。

当日は、シャローム法律事務所の井掘哲弁護士が、安倍晋三首相による靖国神社参拝について触れ、この参拝が日本国憲法の「政教分離」に抵触するとして提訴した違憲訴訟の経過を報告。この後、『戦後日本の宗教と政治の関わり――国会神道の復興』と題し、宗教学者で上智大学大学院実践宗教学研究科の島薗進教授が講演に立った。

日本は明治以後、政府によって、天皇中心の国家だとする「国体」の理念が掲げられるとともに、祭祀を国家行事とするなど、神道を中心として国民を教化する「国家神道」の体制が敷かれた。さらに、近代の立憲主義と神権的国体論とを内包した明治憲法が制定されたが、大正デモクラシーの後、立憲主義が急速に影を潜め、軍部の台頭によって神権的国体論に基づく全体主義の道を突き進み、第二次世界大戦の敗戦に至った。

島薗氏は、こうした歴史を振り返りながら、戦後、戦前の反省から、国民の自由を守り、多様な生き方、考え方を保障する立憲主義に基づく日本国憲法が戦後に制定されたと解説した。しかし、近年、「戦後の民主化は自発的なものではなく、米国に押し付けられたもの」といった主張が国民の一部からなされるようになり、戦前の国体論を復活させるような動きが見られると指摘。戦前の歴史をしっかりと見つめる重要性を示し、国の進路を誤らないために、「立憲主義とは何かをもう一度、問い直さなければならない」と語った。

また、第三次安倍政権の閣僚の多くが、「日本会議」をはじめとする「国家神道色」の強い団体に名を連ねていることに言及。明治天皇の誕生日である11月3日を、現在の「文化の日」から「明治の日」に改めようとする動きや、「強い日本を取り戻す」のスローガンの下、再び神権的な柱を設けて国民を統合していくような政治の動向に対し、立憲主義が脅かされるのではないかと大きな懸念を示した。