バチカンで『信仰と科学――COP26に向けて』 諸宗教者が提言書に署名 光祥次代会長がメッセージ寄せる
諸宗教指導者が地球を守るためにメッセージ
また、アズハルのタイエブ総長は、「神が人間に地球を委託され、友として動物や植物と関係していくようにと促された」と発言。バルトロメオ一世は、「提言書は対話の結果であり、大きな力を持ったシンボル」と評価し、「対話の継続」を主張した。諸宗教対話のためのユダヤ教国際委員会のラビであるノアム・マランス師は、「神が私たちに与えた地球(の現状)に憂慮して結びついている諸宗教者」といった面に注目し、COP26のアロック・シャルマ議長は、「提言書は全世界に向けて行動を促す、非常に強い呼びかけ」と諸宗教者による提言書の内容を評価した。
イランのアヤトラ・ダマド師(イスラーム・シーア派)は、「自然災害が(人間の)道徳的、知的危機を示しており、宗教者が、その解決のために重要な役割を果たす」と指摘。タンザニアで20年以上にわたりキリマンジャロ山の中腹に木を植える運動を展開して「植樹の牧師さん」と呼ばれるフレデリック・ショー牧師(ルーテル教会)は、「温室効果ガスの排出量をゼロにしていく倫理的義務」について述べた。
教皇フランシスコは、式典の冒頭で参加者たちに手渡されたスピーチ文の中で、気候変動に対処するために仏教の「諸法無我」や法華経の「一乗」と同様の世界観の重要性に触れ、「全てが結びついている。世界においては、緊密に結びついている」と明記。「科学のみならず、私たちの信仰、霊的伝統が、私たちの全てと他の被造物との結びつきに光を当てている」とし、「おのおのが他者に依存することによって存在している」「互いに補完し合いながら、他者に奉仕するために存在している」と述べた。さらに、あらゆるものが「単独では行動できない」として、「他者と環境に対する癒やし(ケア)の努力が欠かせない」と指摘。その努力は「自身の信仰と霊性によって涵養(かんよう)される」と説き、「速やかに人類の歩む方向を変えていかなければならない」と訴えた。
COP26への提言書では、「庭園を相続した私たちは、それを砂漠にして子供たちに残してはならない」と戒め、「できるだけ早く温室効果ガスの排出量をゼロにし、気温の上昇を1.5度以内に抑えるように」と呼びかけている。「経済的に富める国が、自国の温室効果ガスの排出量を削減し、貧しい国々の削減の努力を財政的に支援するように」とも訴えている。
その上で、宗教者の誓約として、「われわれの宗教伝統のメンバーと共に、地球と他の国の人々とのよりよい関係を築く心を育んでいく」「われわれの教育、文化施設を使って、包括的な環境教育に取り組み、推進する」「環境問題に関する公の討論会に積極的に参加する」といった活動を掲げている。
会合の席上、提言書は、ローマ教皇からCOP26のシャルマ議長とイタリアのディマイオ外相に手渡された。