WCRP日本委がオンラインシンポジウム「STOP核依存」を開催 日米の市民社会が果たす役割とは

シンポジウムでは、核兵器の廃絶に向けた政治の役割、市民社会や個人の取り組みなどについて意見が交わされた(「Zoom」の画面)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会核兵器禁止条約批准タスクフォース主催によるシンポジウム「STOP核依存~宗教者の立場から日米の市民社会が果たす役割を考える」が9月12日、オンラインで開催された。宗教者や市民ら151人が参加した。

シンポジウムでは、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の中村桂子准教授、ユニテリアン・ユニバーサリスト協会(UUA)国連事務所のブルース・ノッツ所長が基調講演を行った。

中村氏は、今年1月に発効した核兵器禁止条約に触れ、この条約は核抑止力によって自国を守るという安全保障の概念ではなく、人類の潜在的な脅威となっている核兵器そのものをなくすことで全ての人の安全を守る「人類のための安全保障」という考えに基づくものと説明。核兵器の禁止に向けた世論の高まりを受けて、その製造に関わる企業に融資しない金融機関が増えている現状を紹介し、市民社会が主導して核兵器の非人道性を訴え続けることで、これまで以上に核兵器廃絶に向けた国際世論を形成できると述べた。

さらに、核軍縮を進めるために、国家と市民社会の協働、軍縮教育の推進、男女双方の参画といった取り組みの重要性が同条約の前文に盛り込まれた点を強調。市民一人ひとりが当事者意識を持って核廃絶に取り組むことが大切と訴えた。

ノッツ氏は、各国が新型コロナウイルス感染症の流行、気候変動といった喫緊の課題への対応を優先し、同等の問題である核廃絶に向けた動きが停滞している現状に対して憂慮の念を表明。核兵器は人類の存続に関わる重大な脅威であるとの認識を深め、再び使用される前に、全廃に向けた議論を進めることが重要と語った。

また、核抑止力に依存した安全保障政策が国家間の緊張を高めることは、歴史が証明していると指摘。各国が核抑止力政策を転換するためにも、世界の核政策への影響力が大きい米国の市民が、投票行動を通して核廃絶を訴える議員を連邦議会に送り出す必要性を説いた。

この後、市民レベルで核廃絶に取り組む3人がパネル発題を行った。

NPO法人「ヒロシマ宗教協力平和センター」(HRCP)の上田知子理事長は、広島の被爆者たちは今も、原爆投下直後の凄惨(せいさん)な光景を忘れられず、苦しみや、大切な人を失った悲しみを抱えながら生きていると報告。それでも、「戦争を繰り返すことなく平和な社会を築いてほしい」との願いから、自分のつらい体験を語り続ける証言者は少なくないとして、「被爆された方々に教えて頂いた、人を思いやる心、許し合う心を伝えながら、核兵器のない世界を皆さんと一緒につくりたい」と語った。

カトリック広島司教区のシスターである古屋敷一葉氏は、核廃絶に向けた平和行進やシンポジウムなど同司教区の取り組みを説明した。さらに、ローマ教皇フランシスコが一昨年に長崎市で行ったスピーチで、教皇パウロ六世が1964年に示した「防衛費の一部から世界基金を創設し、貧しい人の支援に充てる」という提案に言及したことを受け、同司教区とNPOなどが協力して「核なき世界基金」を創設したと報告。核廃絶に向けた市民活動を支援していると述べた。

上智大学3年生の中村涼香さんは、学生にもできる核兵器廃絶のアクションとして、自らの取り組みを詳述。日本世論調査会の調べで、国民の約7割が日本は同条約に「参加すべき」と回答した一方、国会議員は28%にとどまったことを踏まえ、国会議員や知事に同条約への賛否を問い、その結果をインターネットで公開する取り組みに協力していると述べた。また、仲間とつくった団体で、国会議員に会い、核兵器に対する立場を明らかにする「議員面会プロジェクト」などを展開していると発表した。