第9回「ACRP東京大会」迫る 法輪閣を拠点に10月19日から22日までオンラインで開催

根本信博・ACRP事務総長 談話

アジア宗教者平和会議(ACRP)の第9回大会は本来、昨年の秋に東京で開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの世界的な流行により、今年に延期され、一堂に会する形式からオンラインでの実施に変更になりました。私たちはこの一年間、大会の意義、目的、宗教者が果たす役割を改めて問い直し、準備を進めてきました。ACRPがアジアの宗教者による平和を実現するための運動体として、より具体的に行動していくための最大の機会にしたいと考えています。

ACRPの根本事務総長

大会のメーンテーマは『行動するアジアの宗教コミュニティ:誰一人取り残さない、健やかで豊かなアジアの平和をめざして』です。「誰一人取り残さない」という考えは、国連で定められた「持続可能な開発目標」(SDGs)にも示されているように、平和な世界を築く上で欠くことのできない重要な観点になっています。アジアでもさまざまな開発が進められていますが、その陰でいつも取り残されるのは、女性や子供、高齢者、障害者、性的少数者など社会的弱者と呼ばれる人々です。こうした人々に寄り添い、共に歩んでいくために、さらに具体的な行動を起こしていく大会にしていきます。

また、「健やかで豊かなアジアの平和」とは、単に紛争や戦争のない「消極的平和」を指すだけでなく、争いや紛争の原因である貧困や人権侵害、差別、飢餓といった構造的な暴力がない「積極的平和」を想定しています。積極的平和を実現するには、「発展のためには弱肉強食も致し方ない」といった文化から、全ての人が共に「分かち、支え合う」文化に変えていくことが必要です。国家や企業の利害を超え、地球全体の利益、全ての人にとっての平和を説く宗教者には、大きな責任があり、大会を通じてそれぞれが自身の役割を見つめていきます。同時に、宗教者だけでは全てを解決することはできませんから、各国の政府や国連組織、NGO、市民団体と連携して、その実現に取り組む方法についても協議する予定です。

ACRPでは現在、「人身取引防止」「いのちの尊厳教育」「平和構築と和解」「環境問題」「青年リーダー育成」という五つの「フラッグシップ・プロジェクト(重点実施事業)」に取り組んでいます。大会では各プロジェクトの進捗(しんちょく)や今後の活動、課題について話し合い、各国の諸宗教評議会(IRC=国内委員会)の組織強化や活動資金の調達方法、宗教組織以外の団体や組織とのパートナーシップの構築などについても議論します。このほか、プロジェクトにはなっていませんが、ジェンダーイコーリティー(男女の格差是正)やLGBT(性的少数者)への取り組みも今後の重要な課題です。

この一年、新型コロナウイルスの感染症は、アジア各地にも大きな被害をもたらしています。多くの人の生命が危機にさらされており、特に生活困窮者への影響は深刻です。先進国がワクチンを独占することなく、開発途上国にも送る必要があります。そうしなければ、ウイルスは新たな変異を繰り返し、いつまでもこの感染症を抑えることはできません。新型コロナウイルスは、世界の人々が運命共同体であることを再認識させました。

さらに、アジアに目を向けると、ミャンマーとアフガニスタンでは政情不安により、人々の権利や暮らしが脅かされています。今後、アジア地域全体の安定に大きな影響を及ぼすかもしれません。それぞれの国で起きている出来事を他人事とせず、同じ世界、アジアに暮らす私たち日本人も渦中にいることを認識し、危機感を共有して助け合っていくことが重要です。アジアの現状を踏まえれば、今大会はこれまでにも増して、重要度の高い大会になると思います。

今大会はオンラインでの開催になったことで、事前登録すればACRPの加盟団体や友好団体の会員の方々の視聴も可能になりました。世界を、アジアを平和にしていくには、全ての人が力を発揮し、協力することが必要です。一人ひとりは微力ですが、決して無力ではありませんから、それぞれの力を結集すれば、必ず課題を克服することができます。今大会に一人でも多くの方に参加して頂き、「誰一人取り残さない」を合言葉に、健やかで豊かなアジアの平和に向け、共に行動していけたらと願っています。