ACRP主催 アジアの宗教者が人身取引の防止に向けオンライン会合

アジア各国から集った参加者は、強制結婚や児童労働など女性と子供が受けている被害の現状を学んだ(「Zoom」の画面)

『現代の奴隷状態に置かれているアジアの女性と子どもたち』をテーマに、人身売買(人身取引)の防止を目的とした会合が6月22、23の両日、オンラインで開催された。主催はアジア宗教者平和会議(ACRP)のアジア太平洋女性信仰者ネットワーク(APWoFN)。ACRPから根本信博事務総長、神谷昌道シニアアドバイザー、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会から森脇友紀子女性部会部会長(カトリック東京大司教区アレルヤ会会長)、篠原祥哲事務局長らが参加した。2日間で延べ150人が視聴した。

人身取引とは、暴力や脅迫、誘拐などで強制的に労働させ、性的、経済的に搾取する犯罪行為を指す。臓器売買なども含まれ、犠牲者は世界で4030万人と推計されている。

ACRPではこの問題に焦点を当て、「フラッグシップ・プロジェクト(重点実施事業)」の一つとして人身取引の防止活動を推進。同会合はこの一環で、今年1月に『アジアにおける人身売買の現状』と題して行われたオンライン会合に続くものだ。アジアでも多くの人々、特に女性と子供が被害を受けている深刻な現状を学び、その解決に取り組むことを願いとしている。

22日の会合では冒頭、同ネットワーク事務局長を務める森脇師が開会挨拶し、会合の趣旨を説明。続いて、『女性と子供の尊厳についての精神的考察』と題した会議が開かれた。この中で臨済宗妙心寺派佛母寺の松原正樹住職が講演した。

松原師は、「盲亀(もうき)の浮木(ふぼく)」のたとえや『法句経』の一節を紹介しながら、この世界に人間として生を受けることが、いかに奇跡的であるかを説明。仏教の本質は、そうした自他のいのちの尊さに気づくことであり、そのためには人に尽くす「利他」の実践が重要であると示した。

その上で、社会的に弱い立場に置かれ、被害を受けている女性や子供の命と尊厳を守ることが急務であり、宗教者は宗教・宗派、人種、国籍を超えて多くの人と連帯し、社会全体で人身取引の防止に取り組むことが重要と強調。「世界は全ての人がつながり合っており、私たちは苦しむ人が減るように努力しなければならない」と語った。

全体会議で発表した松原師(左下)は、人身取引の防止に向け、一人ひとりが他者の痛みを自らの問題として受けとめる重要性を説いた

各国の宗教者が現状を報告 解決に向けて全員で議論

この後、2日間の会合では、アジアの宗教者らが各国で起きている強制労働や児童婚、サイバーセックスなど人身取引による被害の現状を説明した。

この中で、ディーパリ・バノットACRP事務次長(インド)が、「性的人身売買」について報告。インドは経済成長が続いているものの、格差の拡大によって苦境に置かれた貧困層が、仕事を求めた際にだまされて、強制労働や性的搾取の被害に遭うケースが増えていると発表した。

WCRP/RfPフィリピン委員会のジョアン・クリスティ・トロシオ・バガイポ氏は、ベビーシッターや家政婦などの家庭内労働者が長時間勤務や低賃金といった過酷な労働、暴力を受けることを「家庭内奴隷」として説明した。そうした仕事は住み込みを伴うことが多く、密室状態で外部とのつながりが少なく孤立しがちなため、被害の実態が見えにくく、人身取引の温床になっていると訴えた。

また、パブリット・ベイバド・ジュニアACRP事務次長(フィリピン)は、「子ども兵士」について詳述。子供が兵士にされる要因として、「洗脳しやすい」「大人への忠誠心が高い」「危険という認識や感覚が養われていない」といった特徴を挙げ、子供が勧誘されないよう搾取構造を断ち切る必要性を指摘した。

各国の代表は、それぞれの報告で、具体的な被害の実例や被害を生む社会背景を伝えた後、人身取引の問題を根本的に解決するため、貧困層の教育機会や安全な雇用をつくるための連携を提案した。さらに、市民による草の根の活動から政治の取り組みに至るまで、さまざまな国際ネットワークを生かして啓発活動に努めることが重要であると確認し合った。