一食推進全国フォーラム 「一食運動」の意義と成果を共有 推進役を担う会員ら303人が参加

オンラインで行われた一食推進全国フォーラム。事業報告では、NPO法人2団体の代表者が、一食運動の支援による活動とその成果を発表した。写真は「ふくしま地球市民発伝所」の竹内代表理事

立正佼成会一食(いちじき)平和基金による「一食推進全国フォーラム」が6月12日、ウェブ会議システムを使って開催された。このフォーラムは、「一食を捧げる運動」の意義を再確認するとともに、運動を推進する上で抱える課題や疑問を分かち合い、意見交換を通してより主体的に運動に取り組めるようになることが目的。全国から一食運動の推進役を担う会員ら303人が参加した。

1975年にスタートした「一食を捧げる運動」(当時は「節食運動」)は、本会の会員が月に数回、自ら食事を抜いて食費分を献金し、世界の貧困削減や教育支援などに役立てる取り組み。『同悲・祈り・布施』の三つの精神を大切にしている。これまでに会員の実践によって150億円以上の浄財が寄せられ、国内外の事業をはじめ、自然災害などの緊急支援や復興活動に活用されている。

フォーラムでは、一食平和基金と共に事業に取り組んできたNPO法人「ふくしま地球市民発伝所」(福伝)の竹内俊之代表理事と、認定NPO法人「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の大村真理子カンボジア事務所代表が事業報告を行った。

この中で大村氏は、2007年から今年3月までカンボジアで取り組んできた「農村再生プロジェクト」を説明。同基金の支援で貧困状態にあった村にため池をつくり、その水を使って多くの村人が家庭菜園に取り組むようになったことを報告し、収穫した野菜は家族で食べる分はもちろん、市場で販売し収入につなげている人も出てきたと話した。その上で、プロジェクトに参加する村人のメッセージを紹介。一食運動による支援は村人の生活の向上だけでなく、生きる気力や誇りを取り戻してくれたと話し、謝意を表した。

次に、同基金運営委員会の熊野隆規委員長(教務部部長)が一食運動の精神についてレクチャーした。同運動40周年に寄せた庭野日鑛会長の法話に触れ、一食運動の要である「同悲・同苦」とは「子を思う母のような心」と説明。世界で苦しむ人々に寄り添い、思いを分かち合うには、食事を抜いた際の空腹をしっかり味わうことが大切と述べた。その上で、食品ロスを減らすなど日常の行動も一食運動であると話し、「コロナ禍で見えた新たな生活スタイルなどを盛り込んでブラッシュアップし、より一層運動に取り組んでいきましょう」と呼びかけた。

JVCの大村氏が、カンボジアでの「農村再生プロジェクト」を説明

この後、参加教会の実践報告が行われ、高岡教会と知多教会の会員が発表した。高岡教会からは社会ネットワーク担当の2人が、新型コロナウイルス感染症の流行による被害対策として昨年打ち出された「一食地域貢献緊急支援プロジェクト」での取り組みを報告。コロナ禍で運営が厳しい福祉関連の団体を支援できたと同時に、団体同士の情報交換やネットワーク構築にも貢献できたと話した。また、知多教会からは青年婦人部長と青年女子部員が『私の一食』と題して自らの実践を発表した。

続いて、グループワークが行われ、参加者は運動推進の課題や改善点について意見を交わし、さらなる啓発のアイデアを出し合った。その後の全体発表では、コロナ禍の影響により集合しての運動推進が止まっている現状が報告され、推進役を担う会員の高齢化でLINE(ライン)などのデジタルツールの活用が難しいなどの課題が共有された。一方、家庭での実践に重きを置いたことで「青年だけが取り組むものというイメージが払拭(ふっしょく)された」「奥さんや子供と一緒に行う壮年が増えた」といった功徳も多く報告された。また、教会に集まれない中での具体的な啓発方法としてLINEで配信される「一食ニュース」の活用が挙げられ、「デジタルは苦手」と言って終わらせるのではなく、家族や青年部に使い方を聞くなど主体的に取り組む大切さが確認された。