庭野平和財団 『新型感染症の影響と市民社会』をメーンテーマに全4回の連続セミナーがスタート

3団体の代表者が、子供の貧困の現状と対策の必要性を説明した(「Zoom」の画面)

『新型感染症の影響と市民社会』をメーンテーマとする庭野平和財団の連続セミナー(全4回)の第1回が6月8日、オンラインで行われた。市民64人が視聴した。

同セミナーは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会問題を検証し、その解決策について考えるもので、昨年に続き開かれた。当日は『今回の事態の前から困難や課題を抱えた人々の状況の推移と、その人々を支援する活動・団体の対応の推移』と題し、ひとり親世帯や生活困窮者を支援する各団体の代表者3人が講演。IIHOE「人と組織と地球のための国際研究所」の川北秀人代表が進行役を務めた。

以前からあった貧困や経済格差の問題がコロナ禍で浮き彫りに

この中で、認定NPО法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長が、「お金がないです。つらい」「派遣を切られた。仕事が見つからない」などコロナ禍の中で急増した相談メールを紹介。母子家庭が困窮する背景として、母親の多くが非正規雇用の労働者で、もともと収入や蓄えが少ない上、コロナ禍で就労の機会が減っていることを挙げた。また、昨春の一斉休校によって子供が自宅待機となり、食費などの支出が増えたことも負担になったと述べた。今後もひとり親世帯への食料支援を続けつつ、安定した生活基盤を作るため就労支援にも力を入れていくと語った。

生活困窮者や路上生活者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は、連携しているNPO法人が都内で毎月行っている炊き出しの様子を紹介。食事を求める人が増え、コロナ禍以前はほとんどいなかった若者や女性、親子の姿が目につくようになったと語った。

また、稲葉氏は、収入減により住居を失った人に個室シェルターや宿泊費を提供し、その後、公的支援につなげる同ファンドの取り組みに触れ、生活保護の申請書類を作成できるウェブサイト「フミダン」の運営、求職活動や公的支援を受けるための申請に必要なスマートフォンを無償貸与する「つながる電話」プロジェクトなどを紹介。支援の現場では、「生活に困っている人がすぐに住居や仕事の相談ができ、社会保障制度につながれるようにしていくことが大事になる」と述べた。

一方、子どもの貧困対策センター・公益財団法人「あすのば」の小河光治代表理事は、コロナ禍における緊急支援として、企業や個人からの寄付金を基に生活に窮する全国の高校生約5000人に支援金を給付したことを発表。支援対象者を公募した際、申請者から「今春、通信制高校に入学したが、母が失職し退学を考えた」「学校の通学費も出せないでいます」といった切迫した声が数多く寄せられたことを紹介した。小河氏は、以前からの貧困や格差の問題が、コロナ禍で浮き彫りになったと指摘し、緊急支援とともに、根本的な課題の解決が重要と語った。

なお、第2回のセミナーは7月1日16時から行われる。テーマは『今回の事態を受けた助成機関の対応の推移』。詳細は庭野平和財団ウェブサイトの「お知らせ」