被災地支援からの協働を次代へ生かすには 釜石社協がフォーラムを開催

『3.11から見えた社協と支援者との協働』をテーマにしたパネルディスカッション

東日本大震災からの復興について、ボランティアや企業との協働による支援のあり方を当事者同士で検証することを目的に、「3.11からをかんがえる釜石フォーラム」が3月3、4の両日、東京・新宿区のスコットホール(早稲田奉仕園内)で開催された。テーマは『つながる釜石――協働、そしてその先へ』。社会福祉法人・釜石市社会福祉協議会が主催した。2日間で、被災地支援の活動家や自治体職員、研究者、宗教者ら約300人が参加。立正佼成会から震災発生時、社会貢献グループ次長として支援にあたった保科和市熊谷教会長が出席した。

基調講演に立つ山崎美貴子氏

フォーラム初日の3日、『“生きる”ということ “いのち”と“共生”その困難と慈しみ』と題し、神奈川県立保健福祉大学顧問で東京ボランティア・市民活動センター所長の山崎美貴子氏が基調講演に立った。山崎氏は被災地を頻繁に訪れ、仮設住宅で湯茶や菓子を提供しながら話を聴く「お茶っこサロン」の活動に参加した経験から、「人とのつながりが実感できるコミュニティーが被災地にあることで、生きる希望を取り戻す可能性が高まる」と話した。

その一方、復興のスピードに付いて行けずにストレスを抱え、心を閉ざす人も多いと指摘。「被災者のペースに合わせた、『あなたと苦しみを分かち合いたい』との姿勢が相手の心を開かせる」と語り、復興には現地の状況に、丁寧に向き合う姿勢が欠かせないと強調した。

続くパネルディスカッションでは、『3.11から見えた社協と支援者との協働』をテーマに議論。釜石市社会福祉協議会とNPO法人「カリタス釜石」が行っている「お茶っこサロン」のほか、同協議会とNPO法人「hands」による取り組みが紹介された。handsは岩手・北上市の企業経営者の有志で組織した団体で、県外の企業と連携した物資支援をはじめ、被災者が土地を借りて行っている農業への体験ツアー、収穫された作物を県内外の企業の食堂に納品する仲介などに力を注いでいる。

ディスカッションの中で、同協議会の地域福祉課の菊池亮課長は、民間団体と協働することで、それぞれの特長を生かし、よりきめ細かな支援が実施できると強調。一方、カリタス釜石の伊瀬聖子副理事長、handsの菊池隼理事長は、民間団体では時間を要する自治体との調整や、被災者と触れ合う際に考慮すべき地域の文化や習慣などの情報の提供を同協議会が担うことで、ニーズに応じた活動に専念できるメリットを挙げた。

菊池課長は、「互いの強みを生かすことで相乗効果が生み出され、三者で定期的に情報を共有し、意見を交換することで、釜石の人々の生活スタイルに合わせた支援体制が構築できたのではないか」と成果を報告。「経済の低迷や人口減少の問題に悩む釜石市にとって、こうして培われた協働のノウハウは、復興を遂げた後も、持続可能な地域社会づくりに向けての重要な道筋になる」と述べた。

分科討論会。写真は、サロン活動に関する討論会の様子

この他フォーラムでは、『社会福祉協議会の現実と可能性』『企業における被災地支援』『サロン連絡会が生み出した被災者支援の実態と価値』の分科討論会が開かれた。『サロン連絡会』では保科氏がパネリストの一人として登壇。同協議会と協働で取り組む「お茶っこサロン」の活動の内容や意義、成果を報告した。