ゲノム編集と出生前検査の問題をテーマに 教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」第21回研究会

生命倫理政策研究会の橳島共同代表が、ゲノム編集のヒトへの応用や優生社会との関係について問題提起した(「Zoom」の画面から)

立正佼成会の中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会の「生命倫理研究部会」は3月25日、第21回研究会をウェブ会議システムを使用して行った。オブザーバーを含む13団体から30人が参加。本会から中央学術研究所の橋本雅史所長らが参加した。

当日は、生命倫理政策研究会の橳島(ぬでしま)次郎共同代表が『ゲノム編集について考えなければいけない問題』『出生前検査から優生社会について考える』の二つをテーマに講演した。

橳島氏は、生物の細胞にある遺伝情報(ゲノム)を人為的に改変する「ゲノム編集」について説明。従来の遺伝子組み換えよりも低コスト、高精度、高効率なため、作物や家畜の品種改良、医療分野などへの応用が期待されると述べた。一方、人間の受精卵のゲノム編集などヒトへの応用は将来、子孫に思わぬ悪影響を及ぼしかねず、さらに、一人ひとりの人間が本来備えている身体的特徴や個性を尊重する精神が損なわれる危険性もあるとして、生命倫理的観点から十分な議論が必要と訴えた。

また、妊婦の血液から胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(NIPT)を解説。胎児にダウン症などの可能性があるとの診断結果を受けた場合、中絶を選択するケースもあるとし、個人の判断による「生命の選別」の問題を提起した。

橳島氏は、人間には遺伝的により優れた人類を後世に残そうという本能があるとの考えを示した上で、大事なのは、それが極端な「優生思想」となり、「優生社会」を生み出す要因とならないことと述べた。その意味で、人の生老病死を信仰的に捉える宗教者が信仰的な価値観に基づいた提言を世に示すことが大切と語った。