第38回庭野平和賞 台湾の尼僧 昭慧法師に

第38回庭野平和賞を受賞した昭慧法師 ©Hong Shi Cultural and Educational Foundation

「第38回庭野平和賞」の受賞者が、台湾の尼僧で、社会運動家の昭慧(チャオフェイ)法師(63)に決まった。公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)は2月26日、オンラインで記者会見を開き、席上、庭野理事長が発表した。

昭慧法師は、「一切衆生を慈しむ」という仏教の根幹の実践に努め、動物や自然を含むあらゆる生命の保護や男女平等の推進、賭博の禁止など、さまざまな社会運動を展開。NGO関係者、研究者、諸宗教指導者らと協働し、台湾の平和構築に尽くしてきた。贈呈式は、6月2日に行われ、賞状と顕彰メダル、賞金が贈られる。         

一切衆生を慈しむ仏教精神を基に、さまざまな社会運動を展開

庭野平和賞は、宗教協力を通じて世界平和の推進に顕著な功績をあげた個人や団体に贈られる。世界の識者600人が推薦した候補の中から、庭野平和賞委員会の審査を経て選ばれる。

昭慧法師は、1957年、ミャンマー・ヤンゴンに生まれ、8歳の時、家族と共に台湾に移住した。国立台湾師範大学在学中、21歳で仏門に入り、2年後に具足戒を受けて僧侶となった。その後、「人間(じんかん)仏教」を提唱する印順導師に師事。人間仏教では、寺院などにこもり、世俗を離れて修行するのではなく、社会の問題に積極的に関わり、教えによって世界をより良いものにしていく「行動(実践)」に重きが置かれる。昭慧法師は86年、「佛教弘誓學院」を創立。智慧(ちえ)を身につけ、菩薩の精神を育み、人間仏教を広める人材を育成するとの願いからだ。

こうした布教活動や人材育成に加え、社会活動の一つとして93年に「自然保護協会」(LCA)を創設。市民に動物虐待の終止を訴え、環境保護運動を推進し、「野生動物保育法」「動物保護法」の制定に導いた。

1993年、動物保護協会は野生動物保護に関する公聴会を開催 ©1993 Hong Shi Cultural and Educational Foundation

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