第3回パグウォッシュ公開講座 核兵器禁止条約発効と「日本の平和主義の今日的意義」を説明
『核時代における非戦』をテーマに、科学者や市民らが平和への取り組みを考える今年度の「パグウォッシュ公開講座」(全4回)の第3回が1月29日、オンラインで実施された。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所の共催。宗教者や市民ら121人が視聴した。立正佼成会からWCRP/RfP日本委核兵器禁止条約批准タスクフォース責任者の中村憲一郎参務(京都教会長)らが参加した。
当日は、『戦後日本の平和主義の今日的意義――リチャード・フォーク「パワー・シフト」を手がかりに』と題し、千葉眞国際基督教大学名誉教授が講演した。千葉氏は、核兵器禁止条約が1月22日に発効した意義に触れ、核廃絶を願う被爆者や国際世論の訴えが形となった歴史的な一歩と説明。今後、日本政府に参加を求める働きかけが重要になると述べた。
一方、「日本の平和主義の今日的意義」を検証する手がかりとして、米国の法学者であるリチャード・フォーク氏の著書で、千葉氏も翻訳に携わった『パワー・シフト』を紹介。国際関係で重要なのは、軍事力と経済力によるハードパワーではなく、自由と民主主義の理念に基づくソフトパワーであると解説し、国家中心の政治から地球全体を捉えた政治への移行が必要と訴えた。
さらに、フォーク氏も「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重」を定めた日本国憲法を高く評価しており、国家を第一に考えて民が国に仕える国家主義ではなく、民が主権者として国の進路を決める民主社会こそ平和国家のあり方と強調。平和や人権を脅かす憲法改正の動きに懸念を示した。その上で、「格差の広がりや気候変動の危機に直面する今、一人ひとりが地球市民としての意識を持ち、行動することが大事」と語った。
続いて、同著の翻訳に携わった創価大学の前田幸男教授がコメント。地球の危機を知ると同時に、自然の神秘さや不思議さに目を向け、感性を磨く重要性を話した。