「諸宗教者が平和への提言を公表していたミャンマーで 軍がクーデター」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

諸宗教者が平和への提言を公表していたミャンマーで 軍がクーデター

ミャンマー国軍が2月1日、与党の国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問兼外相、ウィン・ミン大統領を拘束し、政権を奪取した。この日、昨年11月8日の総選挙後初めての連邦議会が招集される予定だった。

総選挙では、NLDが連邦議会の8割を超える議席を獲得した。国会の定数(664)の4分の1を占める軍人議席を含めても単独で過半数となる大勝だった。

カトリックのチャールズ・ボー枢機卿が顧問を務める世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)ミャンマー委員会と、アジアのカトリック司教会議連盟(FABC)は1月25日、総選挙で成立した新政権と、各民族指導者、政治・軍事指導者らに向け、7項目に及ぶ「特別提言」を行い、その内容を公表していた。

提言の中で、総選挙が自由、公平に行われたことを認めた上で、新政権は「全ての人を包摂する経済・社会政策を遂行していく義務を負う」と主張。それを果たすには、平和的な条件を整えることが必要であり、政治・軍事指導者に対して「(諸問題の)軍事的な解決という無用な追求をしないように」と呼びかけている。対話と交渉を通して真の正義を求めることが、諸宗教者の提案する平和への道だと主張する。

特に、第2項目の「あらゆる民族的差別の廃止」には正義が求められるとし、全ての紛争に民族問題が関わっているが、その原因は政治にあると分析。諸民族間の「連帯」を重視し、その道を歩むよう求めた。

第3項目では、「ミャンマーの非軍事化」を提唱。「戦争とは死の言語であり、暴力が平和を生み出すことはなく、国家の調和を乱す」「市民を巻き込む戦争は、人類を兄弟姉妹とする真理を否定するものだ」と訴える。

続く第4項目では、「政治の対立を軍事的に解決することは絶対にあってはならない」と断じ、武力による問題解決は、終わりのない戦争と悲しみを生み出すと指摘。少数民族の居住区に国軍を広く展開することは、対話が欠如している場合、連帯という「一致」には至らないと示した。

第5項目で司法、教育、社会福祉、医療制度の充実に向けた努力を新政権に要望。第6項目では、国の方針を定める決議が首都の意向だけを優先することがないよう、「決議の過程における分権化」を要請した。

最後の第7項目では、貧困をなくし、より良い国家を建設していくために次世代の教育の拡大と質の向上を強調。「ミャンマーのあらゆる人々の教育を充実させることは、平和構築に向けて、武器を購入するより百倍も貴重である」と訴えた。

アジアのカトリック国際通信社「UCAニュース」は1月29日、同提言が公表された翌日に、同国国軍のミン・アウン・フライン最高司令官が11月の総選挙で860万人分の不正投票があったと指摘し、選挙結果に疑問を持つと発言したことを報じた。国軍からの具体的な証拠は提示されておらず、選挙管理委員会は選挙結果を認定していた。

この報道では、民政と軍部との間で緊張が高まった場合、歴史の浅いミャンマーの民主主義が危機に陥るのではないかとの懸念が伝えられていた。

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