『核廃絶――諸宗教と文明の対話』発刊 光祥次代会長の発言内容も掲載
核廃絶と宗教の役割に関するシンポジウムの内容をまとめた書籍『核廃絶――諸宗教と文明の対話』(上智学院カトリック・イエズス会センター、島薗進編)が先ごろ、岩波書店から発刊された。シンポジウムに出席した立正佼成会の庭野光祥次代会長が、本会の核廃絶の取り組みなどについて発表した内容も紹介されている。
同書は、一昨年5月に開催されたシンポジウム「『平和、非核、人類文明の未来』~宗教者・研究者による対話」(主催・上智大学カトリックセンターなど)の内容を記録したもの。シンポジウムは、2017年に核兵器禁止条約が採択されたことなどを受けて実施され、平和・核廃絶の活動に取り組む教団の宗教者や、研究者などがパネリストとして出席した。
同書は4部構成で、第1部には、核兵器禁止条約の採択に貢献し、ノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)共同創設者のティルマン・ラフ氏らによる基調講演の内容を掲載。核兵器の破壊力や、核戦争が人類や地球環境に与える影響、核廃絶に向けて世界の人々が連帯する必要性などが記述されている。
第2部では広島の「被爆証言」、第3部では、宗教者や研究者によるシンポジウムでの発言を掲載。この中で、パネリストとして出席した光祥次代会長の発表の内容も紹介されている。
シンポジウムで光祥次代会長は、本会の核兵器廃絶運動は、1963年に庭野日敬開祖が「核兵器禁止宗教者平和使節団」の副団長として欧米各国を訪れ、核兵器の全面禁止を訴えたことを機に始まったと説明。これまで、宗教協力を基盤に取り組みを行ってきたとも述べた。
また、庭野開祖が国連軍縮特別総会(SSD)で3回にわたり演説したことにも言及。「核抑止論の本質は、威嚇、脅しであり、それは他者への疑いや不信から生まれます」「抑止論のような相互不信を増長する関係は、抑止どころか、むしろ核使用の危険性を高めます」と指摘した上で、庭野開祖の「危険をおかしてまで武装するよりも、むしろ平和のために危険をおかすべきである」というメッセージは、「心の改革を訴える宗教的メッセージであると同時に、現実に核抑止論を乗り越えるための、議論の出発点であります」と述べた。
さらに、仏教の「縁」の考え方や、母親の立場から平和活動についても語っている。
第4部には、ローマ教皇フランシスコが一昨年11月に来日し、長崎や広島などで行ったスピーチの全文が収録されている。
同書は、定価1800円(税別)。