温室効果ガス排出量0へ向けて――欧州連合とバチカン(海外通信・バチカン支局)

温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の採択から5年が経つのに合わせ、『気候野心サミット』と題した会合が12月12日、オンラインで開催され、70を超える国や地域の首脳らが参加した。

同サミットは、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)議長国の英国と国連事務総長が共催し、チリ(COP25議長国)とイタリア(プレCOP26ホスト国)の協力を得て開催された。また、これに先立つ11日、欧州連合(EU)の首脳で構成される欧州理事会は、「2030年までに温室効果ガスの排出量を55%削減する」との決議案を採択した。

同理事会のシャルル・ミシェル議長は同日、ツイッターに「欧州は、気候変動対策のリーダーだ」と投稿。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も、ツイッターに投稿し、「欧州理事会はEUの気候政策に関して、野心的な目標を採択し、2050年までにカーボン・ニュートラル(二酸化炭素の排出量を実質的に0とする)を実現するための明確な道のりを示した」と記した。一方、フランスのマクロン大統領は、同理事会の決議を「(気候変動に対処するための)他の解決策がないからだ」とコメントした。

同サミットで演説したローマ教皇フランシスコは、「現在、進行している新型コロナウイルスの世界的な流行と気候変動が、人間の尊厳性と共通善(公共の利益)を中心に据えた『癒やしの文化』を促進するための連帯に、私たちを誘(いざな)う」と主張。バチカン市国が2050年までに温室効果ガスの排出量を0にするよう努力し、聖座(バチカン)が包括的環境論(環境問題について提言した回勅『ラウダート・シ』)の教育を、世界に21万6000あるカトリック学校(生徒総数約6000万人)と、1750のカトリック大学(学生総数1100万人)で展開していくと強調した。

さらに、同市国内で、代替エネルギーの使用促進、水資源利用の効率化、電気やハイブリッド車の導入、ごみ処理と再利用の推進などを主導し、実現していくと公約した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)