パグウォッシュ公開講座 『核時代における非戦』テーマに

国連の「平和への権利宣言」の起草に関わった前田氏が講演した(「Zoom」の画面)

『核時代における非戦』をテーマにした今年度の「パグウォッシュ公開講座」(全4回)の第1回が10月30日、オンラインで開催された。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所の共催。宗教者や市民ら約90人が視聴し、立正佼成会からWCRP/RfP日本委核兵器禁止条約批准タスクフォースの中村憲一郎責任者(参務)らが参加した。

当日は『憲法9条再入門:核兵器禁止条約発効の秋に』と題し、東京造形大学の前田朗教授が講演した。2016年12月に国連総会で採択された「平和への権利宣言」(日本は反対)の草案作成に関わった経験を踏まえ、同宣言は、「平和のうちに生存する権利(平和への権利)」を全ての人に保障することを国連が認めたことに意義があると説明。国家による戦争や紛争が「人権侵害」であるとの根拠になり、全ての人の権利を擁護するため、「殺すことも殺されることもない」ように戦争を否定して平和構築を図る点において、外交や安全保障によって自国を守るというこれまでの考え方とは異なる画期的なアプローチと語った。

また前田教授は、世界には現在、「軍隊のない国家」が26に上るとの自らの調査結果を報告。中でもアイスランドは、米国との安全保障の協定が結ばれていたことから、約60年にわたり国内に米軍の駐留を認めていたが、国の方針を転換して06年に米軍を撤退させ、自国の軍隊の保持も否定して完全非武装国家になった経緯を解説した。その上で、日本も米国との安全保障条約に基づき、米軍の駐留を認め、かつ国際的には「軍隊」と認識されている自衛隊を持ち、「殺されることのない」状況を維持してきたが、憲法9条の平和主義は、「殺すことも、殺されることもなく生きられること」であると強調。アイスランドのように、日本も軍事力に頼らずに平和を築いていく方向を模索していくべきではないかとの見解を述べた。