第37回庭野平和賞贈呈式 法輪師記念講演 要旨

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10月26日にオンラインで開催された「第37回庭野平和賞贈呈式」の席上、受賞者の法輪(ポンニュン)師が記念講演に立った。要旨を紹介する。(文責在編集部)

法輪師記念講演

この二十数年間、諸宗教指導者と共に朝鮮半島の平和に向け、人道支援事業を進めてきました。また、インドの不可触民、アフガニスタン難民、フィリピン・ミンダナオの原住民やムスリムを支援してきました。活動の中で、飢餓、疾病、非識字などの絶対貧困の背景には、常に対立と敵意が存在することを体験し、敵意の解消なくして、人道支援も人権の保障も不可能と認識しました。

世界で目にする対立と敵意を解消するには、宗教をはじめあらゆる集団が互いの違いを認め、理解し、協力することが必要です。敵意を滅しなければ平和は根付きません。お互いの理解と深い敬意という豊かな土壌にのみ、平和の花は咲くのです。

仏陀(ブッダ)の偉大さは、新たな道である「中道」を見いだされたことです。中道とは、欲望の充足により得られる「快楽」と、欲望を抑える「苦行」の両極端を離れた新たな道――いかなる偏見や観念にもとらわれることなく、真実を探究し、全ての苦しみや煩悩から抜け出す実践修行法です。人々は欲求を満たすことが幸せであるという間違った考えを持っています。仏陀は、人が自らの欲求から解放されて初めて真の自由と幸せを享受できると説きました。全ての人に、幸せに生きる権利があり、自由と幸せは全人類の夢です。そのために実践すべき三つの事柄を申し上げます。

一つ目は「平和」です。理念、宗教、国家の違いを超え、紛争に反対し、平和を支持する活動には、対話と協働の視点が必要です。朝鮮戦争は開戦から七十周年となりますが、いまだ終結していません。再び戦争が起これば周辺国にも甚大な被害をもたらすでしょう。反対に、朝鮮半島の平和は、アジアにとどまらず、世界平和につながる重要な懸け橋になるでしょう。

二つ目は「環境」です。気候危機は、国家の安全保障の問題となり、食料不足、伝染病、山火事の発生を招いて、その影響は深刻さを増しています。この現象は現代文明の危機であり、多くのものを消費することが良い暮らしとする消費主義から脱却しなければなりません。「人類の持続可能な発展」のために消費を減らすか、共倒れするか、重大な岐路に立っています。

三つ目は「構造的不平等の解消」です。この不平等は飢餓、疾病、非識字と差別に象徴されます。二十年前、私が飢えに苦しむ北朝鮮の子供たちへ支援を始めた時、人々は「どうして敵に手を差し伸べるのか」と反対しました。「支援した米が弾になって返ってくる」との反論も聞かれました。しかし、飢えに苦しむ人に食べ物を、病に苦しむ人に薬を、難民に避難所を提供することは、何よりも優先すべきことです。誰も差別されてはいけません。人は一人の例外もなく尊く、平等です。世界の果ての深刻な貧困は、地球規模の不平等の証しでもあるのです。

新型コロナウイルスの大流行により、今、世界は大きな危機に直面しています。ところがどの国も自国のことだけを考え、他の国を非難したり、責任転嫁をしたりしています。危険なのはウイルスではなく、危機に直面して分裂した私たちです。分裂が問題解決の最大の障害になっているのです。

もはや特定の地域、特定の宗教、特定の国家だけの平和は存在しません。

もはや特定の地域、特定の宗教、特定の国民だけの安全も存在しません。

平和や環境における問題、構造的不平等、感染症は、早急に解決しなければならない課題です。世界中の平和活動家や政治指導者、宗教指導者の協力があれば、困難な問題も解決できるでしょう。心を合わせることで、奇跡は起こるのです。