第37回庭野平和賞贈呈式 オンラインで開催 韓国「浄土会」創立者の法輪師が受賞記念講演

第37回庭野平和賞が在家仏教教団「浄土会」創立者の法輪師に贈られた ©The Peace Foundation

公益財団法人・庭野平和財団による「第37回庭野平和賞贈呈式」が10月26日にオンラインで開催された。6月3日に国際文化会館(東京・港区)で行われる予定だったが、新型コロナウイルス流行の影響で延期されていた。

受賞者は、韓国の在家仏教教団「浄土会」の創立者である法輪(ポンニュン)師(67)。「慈悲の実践を通じて世界全体の幸福に貢献する」との理念を基に、朝鮮半島の和平実現をはじめ世界各地で人道支援や環境保全に取り組んできた功績が高く評価された。贈呈式には、韓国から参加し、記念講演を行った。招待を受けた宗教者や識者129人が視聴した。

仏教精神を基に各地で救援・支援活動を展開してきた受賞者

法輪師は1953年、韓国蔚山(ウルサン)広域市の農家に生まれた。16歳で得度。35歳の時、仏教による社会問題の解決を目指し、浄土会を設立した。真の平和(浄土)を実現するため、座禅や修学を通して各人が心を見つめ、利他の実践に励む仏道修行の場を開設した。加えて、浄土会内に国際NGО「ジョイン・トゥゲザー・ソサエティ」(JTS)や「平和財団」「グッドフレンズ」「エコブッダ」など多くの団体をつくり、国内外で人道支援や福祉、環境保護などの活動に取り組んできた。

自著『心が目覚める生き方問答』(地湧社)には、「社会だけを見ていて心の問題を解明しないのは仏教ではないし、自分の心だけ大切にして、それを取り巻く社会を無視するのも仏教ではありません」と記されている。

法輪師が朝鮮半島の和平実現を目指し本格的な活動を始めたのは96年。北朝鮮で発生した大洪水による食糧危機に対し、韓国の33の仏教団体と協働して「韓国仏教分かち合い運動」(KBSM)を設立し、救援に乗り出した。翌97年には、南北の和平に向けて、北朝鮮への人道支援を呼び掛ける「100万人署名キャンペーン」を展開し、国内外で援助の必要性を訴えて世論の形成に努めた。KBSMの活動は現在、「グッドフレンズ」に引き継がれている。

2010年、飢餓に苦しむ北朝鮮の人々に小麦を届けるため、韓国の宗教指導者と共に開城(ケソン)市を目指した ©JTS

一方、朝鮮半島の軍事的緊張の緩和が必須との考えから、2004年に「平和財団」を設立。政策提言や啓発活動を通じて和平に尽くしてきた。米朝間の緊張が高まった17年には、関連団体と共に「朝鮮半島平和ラリー」を結成し、1万人以上が参加する反戦・平和促進のための平和集会を世界の主要都市で行った。

世界から貧困をなくし、識字率を高めるために設立したJTSは米国、韓国、インドなどに拠点を置き、貧困地域で食糧援助や医療支援、コミュニティーづくりなどを展開する。19年にはミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャ難民に10万台の調理用ガスコンロを届けた。各国で大規模な自然災害が発生した際は現地にボランティアスタッフを派遣し、緊急支援を行う。環境保全のための教育にも力を注ぐ。

同師は、仏教の布教伝道に精力的で、市民から相談を受け、生き方を説く対機説法会「即問即説」は韓国で人気が高い。

◇ ◆

贈呈式では、庭野浩士理事長のあいさつに続き、庭野平和賞委員会のスーザン・ヘイワード委員長(米国平和研究所相談役)が贈呈理由を報告した。この後、同師に賞状と顕彰メダル、賞金2000万円の目録が贈呈された。

贈呈式では、庭野平和賞委員会のヘイワード委員長が贈呈理由を報告(「Zoom」の画面から)

あいさつに立った庭野日鑛名誉会長は、同師が仏教に出遇(であ)って、人や社会、世界への見方を変え、布教伝道と社会変革に取り組んできた経緯を紹介。「目の前の現象を通して内省し、気づきを得て、即実行に結びつけるところが、法輪師の真骨頂と申せましょう」と述べ、その功績をたたえた。

続いて、同師が記念講演。アジア各地で支援活動に取り組む中で、飢餓や非識字など絶対的な貧困の背景には、常に対立と敵意があると実感したとして、「お互いの理解と深い敬意という豊かな土壌にのみ、平和の花は咲く」と語り、和解と協力の重要性を訴えた。