WCRP/RfP日本委共催のオンラインシンポ「現代世界における和解の諸問題」 宗教者、研究者、NGO代表、ジャーナリストが提言

質疑応答では、パネリストを務めた川崎氏(下段中央)、稲葉氏(中段中央)、安田氏(下段左)が視聴者からの問いに答えた(「Zoom(ズーム)」の画面から)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会が共催するオンラインシンポジウム「現代世界における和解の諸問題~平和で包摂的なグローバル社会に向けて~」(「現代世界における和解の諸問題」実行委員会主催)が9月27日、ウェブ会議システムを使って開催された。加盟教団の信徒や市民約200人が視聴した。

カトリックの髙見大司教、復旦大学の葛特別招聘教授が基調発題

同シンポジウムは、ローマ教皇フランシスコが昨年11月の来日時に発した核兵器廃絶や移民・難民の保護、地球環境の保全などの課題に対するメッセージを受けとめ、諸課題の解決方法や和解の道を探究するもの。同日本委に加え、上智大学(実践宗教学研究科、グローバル・コンサーン研究所)、アジア宗教者平和会議(ACRP)、ピースボート、日本カトリック正義と平和協議会、南山大学社会倫理研究所、愛知大学「アジア共同体の平和学」講座、中部ESD拠点の共催で開催された。

当日は、開会に際して上智大学大学院実践宗教学研究科の島薗進教授があいさつした。バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿からのメッセージが紹介されたのに続き、カトリック長崎大司教区の髙見三明大司教、中国・復旦大学の葛兆光特別招聘(しょうへい)教授が基調発題を行った。愛知大学国際コミュニケーション学部の鈴木規夫教授がコーディネーターを務めた。

基調発題で教皇の「核兵器についてのメッセージ」を紹介した髙見師(写真上)。葛氏(同下)は日中の宗教事情を説明した

髙見師は、昨年の教皇の訪日に触れ、原爆が投下された広島、長崎両市への訪問は「核なき世界」の実現に向けて国際的な関心を高めたとして、「大変意義深い」と語った。その上で、長崎市の爆心地公園で発した「核兵器についてのメッセージ」に言及し、核兵器開発を含め軍備に費やされる資財は「神に歯向かうテロ行為」であると強調。平和の実現には全ての人が互いに信頼を寄せて一致団結し、「核兵器のない世界は可能である」という確信をもって、その廃絶に取り組むことが重要と訴えた。

また、葛氏は19世紀の日本と中国の宗教事情を取り上げ、世界の諸宗教に対する両国の姿勢の違いを説明した。明治維新のさなかにあった日本では、海外に人材を派遣し、他宗教から学んで制度や各教団の改革につなげ、世界との融合を図る方針を取ったと解説。一例として仏教界が1893年のシカゴ万国宗教会議に代表団を派遣した歴史を示した。一方、中国は儒教以外の宗教を認めず、他宗教との交流を拒み続けたことで、「中国の宗教は世界に溶け込めなかった」と語った。これを踏まえ、諸宗教が和解し、互いに生かし合う「包摂・融合」を達成していくには、「真に平等な態度と多元的な意識がなければ非常に難しい」と指摘し、「考えないといけないのは、どのように和解し、生かし合っていくか」と提起した。

この後、『和解と包摂に向けた社会をめざして』をテーマにパネルトークが行われた。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲国際運営委員(ピースボート共同代表)、上智大学総合グローバル学部の稲葉奈々子教授、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏がパネリストとして出演。ACRPの神谷昌道シニアアドバイザーがコーディネーターを担った。

この中で川崎氏は、「核兵器禁止条約は軍縮条約であると同時に、人道・人権の条約でもある」と語り、9月27日時点で核兵器禁止条約の批准国が45カ国に上り、あと5カ国で発効に必要な50カ国に達する現状と今後の取り組みを紹介。稲葉氏は、日本に逃れてきた難民の大半が難民認定されず、過酷な日々を送っている状況を解説しながら、在留資格のない難民に対する市民レベルでの支援について述べた。また、安田氏はナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)のほか、日本で近年起きているヘイトスピーチに象徴される排外主義に触れ、全ての人の和解と社会的包摂を成すには、各人が自身の中にある加害性に気づくことが重要と話した。

質疑応答では、視聴者から難民問題への関心を高める方法、新型コロナウイルス禍でできる平和への取り組み、宗教者の役割などに関する質問が出され、意見が交わされた。