仏教伝道協会主催「第22回BDKシンポジウム」で、中央学術研究所の森章司講師(東洋大学名誉教授)が講演

森氏は、28年間に及ぶ研究成果を基に釈尊の生涯を説明した

公益財団法人・仏教伝道協会による「第22回BDKシンポジウム 新たな釈尊伝~世界で初めて明らかにされた釈尊の全生涯」が9月12日、仏教伝道センタービル(東京・港区)で開催された。中央学術研究所講師の森章司東洋大学名誉教授が市民ら50人を前に講演した。

同シンポジウムは、各界の著名人による講演を通じて、仏教や僧侶、寺院の社会的役割について考えるもの。今回は、釈尊の生涯と釈尊教団の形成史を明らかにする「原始仏教聖典資料による釈尊伝研究」に取り組み、それらを初めて時系列で表した「釈尊伝研究会」代表の森氏が講師を務めた。同研究は中央学術研究所の委託を受け、立正佼成会の支援のもと、平成4年から昨年まで行われた。

当日、森氏は、原始仏教聖典に収録されている釈尊の言行に「日時」が記されていないことが、釈尊の生涯の解明を困難にしてきたと指摘した。それを明らかにするため研究では、1万2000以上の原始仏教聖典を基に、説法、弟子・信者とのやりとり、雨安居(うあんご)、遊行といった釈尊の事績を抽出。当時の釈尊や弟子たちの生活環境を考慮して教団の形成史に重ね合わせ、仮説を立て検証するという作業を繰り返し、年代順に再構成したと説明した。そこではパソコンによるデータベースが大きな力を発揮したと強調した。

また、研究成果を『釈尊および釈尊教団形成史年表』と、それを裏付ける聖典の概要を掲載した『釈尊の生涯にそって配列した事績別原始仏教聖典総覧』にまとめたことも報告した。

森氏は研究の成果として、試行錯誤しながら布教伝道や教団運営に取り組んだ釈尊の生涯を表す中で、人間味にあふれ、親しみ深い釈尊の姿が浮かび上がったと述懐。「悟りを開いて仏陀(ブッダ)となった人間・釈尊の生涯を知り、私たちも法を依りどころとして主体的に生きていくことで、『仏に成れる』ことがうかがい知れる」と述べた。