庭野平和財団オンラインセミナーが終了 4回にわたってコロナ禍で共に支え合う取り組み考える
最終回の第4回では、今セミナーの進行役を務めたIIHOE「人と組織と地球のための国際研究所」代表の川北秀人氏が講師を務めた。各回の学びを振り返り、豊かな社会をつくるために、市民一人ひとりが自らの暮らす地域への意識を高め、住民同士で支え合っていく取り組みの必要性を語った。
この中で川北氏は、同ウイルスが流行するまでの日本の状況について、企業の業績は毎年のように過去最高に達し、内部留保も過去最高を記録していたが、働き手の取り分を示す労働分配率は減り続け、国民の貯蓄が増えていないと説明。資本市場は潤っているが、大半の国民の暮らしが豊かになったわけではなく、「その中で今回の事態(コロナ禍)が起きた」と語り、リーマン・ショックの時よりも深刻な不況に見舞われる可能性を指摘した。
また、将来の人口推計に目を向けると、終戦直後の第一次ベビーブームの世代であり、現在町内会など地域づくりの主力となっている“元気高齢者”(65~70歳)が要介護者の割合が高い85歳以上に移り、その人口が増えると解説。働き手の介護負担が格段に増し、後期高齢者のみの世帯も激増すると述べた。
その上で、国民の所得が増えず、介護を必要とする人が増えていく中で、地域づくりの活動も従来の「行事型」から変化していると報告。住民の生活を支える「生活必須サービス型」に移行し、住民自身が福祉や防災など地域の課題を解決して主体的に地域を運営する「小規模多機能自治」の考え方が広がっていると話した。その一例として、コロナ禍でも、住民のニーズに応じて学校内の消毒ボランティアやひとり親世帯への食糧配布、特別定額給付金の申請支援などを積極的に展開した地域があることを紹介した。
NPO法人などの団体に対しては、社会が不安定化している今こそ、長期的な視点を持ってプログラムを開発することが大切と提言。民間の助成機関は、そのための調査・研究開発に対して支援すべきとの見解を示した。
この後、参加者からの質問に川北氏が応答。「“ウィズコロナ社会”の将来に備える際、留意すべき点は」との問いには、現状の把握に努め、それを基に仮説を立てる力が求められると話し、そのためにも地域活動や市民活動においては、住民らとの「状況の共有」「判断の共有」「実践の共有」をより丁寧に行うことが必要になると述べた。市民活動団体や助成機関、宗教組織の活動については、コロナ禍以前に戻すという意識ではなく、「進化させ、挑戦していく」という姿勢が重要になると語った。