庭野平和財団 『新型感染症が与える影響と市民社会』と題しオンライン連続セミナー 第1回は困窮者の現状を報告し討議

ウェブ会議システムを使ってのオンライン連続セミナー(写真は「Zoom(ズーム)」の画面から)

『新型感染症が与える影響と市民社会』と題するオンライン連続セミナー(全4回)の第1回が6月22日に行われた。庭野平和財団によるもの。市民75人が視聴した。

同セミナーは、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けた人々の状況や明らかになった社会の課題について識者と市民が共に考えるもの。当日は、生活困窮者や路上生活者の住宅支援に取り組む一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事、コロナ禍で困窮した家庭の子を支える、子どもの貧困対策センター・公益財団法人「あすのば」の小河光治代表理事が現状を報告した。IIHOE「人と組織と地球のための国際研究所」の川北秀人代表が進行役を務めた。

セミナーで稲葉氏は、今回の事態で失業し、住まいを失った人に対する「つくろい東京ファンド」の活動を紹介。緊急事態宣言が発令された4月7日に、インターネット上に相談受付メールフォームを開設し、相談者の元に赴く緊急出動チームを整え、一時的な宿泊費を提供するとともに、公的支援につなぐなどの取り組みを行っていると説明した。相談件数は5月末までに約180件に上り、その内容から3月の時点で既に、さまざまな業種の人が失業や減収に追い込まれていたという。現在は、中期滞在用の個室シェルターの拡充に努めていると語った。

生活困窮者支援の現状を語る稲葉氏

また、ネットカフェへの休業要請に伴い、そこで生活する人のために東京都が代替施設としてビジネスホテルなどを借り上げたが、当初、対象者の条件を都内に6カ月以上滞在していることなどとしたため、行き場を失った人が多くいたことを報告。今回のような緊急事態には行政支援に制限を設けず、全ての人を対象とするよう訴えた。

一方、小河氏は、コロナ禍以前から経済的に厳しい家庭の子供の状況は、親の減収や本人のアルバイト収入の減少により、一層厳しさを増していると述べ、「あすのば」の緊急支援給付金事業を説明した。申請者からは、「今春、私立の通信制高校に入学したが、母が失業し、退学を考えた」「就職の内定が取り消しになった」「特別定額給付金が届かず逼迫(ひっぱく)している」といった声が寄せられ、中には「助けてください」と切迫したものもあり、小河氏は「このようなストレートな声を受けることは、なかなかない」と人々の窮状を代弁。貧困は大きな社会問題であり、困窮世帯への継続的な現金給付といった公的支援の仕組みづくり、非正規労働者への雇用対策が急務と発言した。

その上で、この時代を生きるほとんどの人がコロナ禍による痛みを共に経験したのだから、「こうした共通の経験が基となり、困難を抱えている人の問題が“自分事”として考えられる社会になることを強く期待しています」と述べ、分断ではなく、分かち合いが重視される社会への転換点となることを願った。

この後、両氏は視聴者からの質問に回答。財政基盤の拡充や今後の活動の構想などについて考えを述べた。最後に稲葉氏が、「支援の現場は野戦病院のような状況がずっと続いています」と語り、見通しの立たない現状に恐怖を覚えると心境を吐露。“コロナ災害”の被害は規模もスピードもリーマン・ショックを超えるもので、自然災害のように可視化されにくいものの、確実に大勢の人の生活を直撃しており、「多くの方に関心を持ってほしい」と語り掛けた。

第2回は7月15日16時半から18時まで。申し込みは、庭野平和財団ウェブサイトから。 https://www.npf.or.jp/promote_peace/20200612.html