「米国のキリスト教指導者 WHOへの拠出金停止に反対を表明」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

正教会の復活際が祝われる

世界の正教会は4月19日、キリストの復活祭を祝った。「47NEWS」の共同通信の記事(19日付)によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ロシア正教会では18日深夜から、キリル総主教がモスクワの巨大な救世主キリスト大寺院で、信者の参列なしに司祭らだけによる礼拝を行ったと報じた。礼拝には例年、プーチン大統領はじめ政府高官も信者と共に出席するが、この日は姿を見せなかった。ロシア全土では感染が急速に広がっており、「ロシア正教会は、教会での感染を防ぐため、事前に信者に対し、自宅にとどまり、テレビ中継で復活祭の礼拝を見るよう呼び掛けていた」とのことだ。ロシアでの新型コロナウイルスの感染者は4月に急増し、17日には感染者3万2008人、死者273人に達した。

キリル総主教は、公表した復活祭のメッセージの中で、「信仰が神の助けによって、さまざまな悪や試練、特に現在、私たちを襲う危険なウイルスの流行に耐えて生きるための力を与えてくれる」と信徒たちにアピール。同ウイルスは地球に「例外的な試練」を与えているが、「私たちは、救世主の言葉を思い起こすことで、心の安寧を保つことができる」と強調した。その上で、どのような試練であっても、「私たちの一致を引き裂き、創造主であるキリストを知ることで得た、純粋な霊的自由を奪われることがないように」との願いを表した。

一方、コンスタンティノープル(現トルコ・イスタンブール)総主教であるバルトロメオ一世も、復活祭に向けて公表したメッセージの中で、「新型コロナウイルスによって、人間がどんなに弱く、恐怖や絶望に支配されやすいか、自身の知識や自らを信じる心がどんなに力の弱いものであるかが明らかになった」と指摘。死が生命の終焉(しゅうえん)を意味し、死(の考察)から遠ざかることこそ死を受け入れるための正しい方法であるとの見解が、どれほど間違っているかを再確認させていると訴えた。さらに、キリスト教徒は、「苦や死の存在がどんなに明確であっても、それらが人間にとっての究極的な現実ではないことを知っている」と述べた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)