本会支援の「カンボジア国立仏教研究所」創立90周年 記念式典に庭野会長が祝辞寄せ

プノンペンの宗教省で行われた創立90周年式典。席上、庭野会長の祝辞が披露された

立正佼成会一食(いちじき)平和基金が支援する「カンボジア国立仏教研究所」の創立90周年記念式典が1月21日、プノンペンの宗教省で行われた。同基金運営委員会の根本昌廣副委員長(時務部主席)が出席し、庭野日鑛会長の祝辞を代読した。同運営委員、事務局スタッフ5人が同行した。

同仏教研究所は1930年に設立された。国語辞典や三蔵経(トリピタカ)の編纂(へんさん)といった国家事業に加え、宗教や歴史、文学、文化財の調査と研究、図書館の運営、同国最古の仏教雑誌『カンプチヤ・ソリヤ』の発刊などを担い、仏教徒が9割を占める同国の文化の中心として発展した。

しかし1975年、既存の文化や宗教を徹底的に否定するポル・ポト政権の弾圧により、国中の寺院が破壊され、僧侶の多くが虐殺された。研究所も閉鎖され、経典や書籍も焼き払われた。

90年代に同国の本格的な復興が始まると、宗教省、シャンティ国際ボランティア会(SVA)から要請を受けた本会は、庭野日敬開祖の「卆寿記念特別事業」として95年に研究所再建の支援を開始。2002年の落成までに、一食平和基金から建設や、経典を含むクメール語書籍の復刻などに1億2400万円を超える支援金を拠出した。同年10月の落成式には庭野会長が出席し、祝辞を述べた。

その後、順調に運営されたが、07年ごろから運営資金の調達が難しくなり、蔵書の管理機能が低下。『カンプチヤ・ソリヤ』も休刊に追い込まれた。

こうした状況を受け、本会は16年から新たに「復興支援事業」を展開。仏教研究所ではスタッフ研修を通じて人材の育成を図るとともに、蔵書の整理やデータベース化、電子化が進められた。『カンプチヤ・ソリヤ』の定期発刊、古文書の復刻が再び可能になった。

仏教研究所は現在も、宗教省や研究者、僧侶らと連携を図りながら文化事業を推進する。同国の宗教文化や歴史の専門家による月例講演会を実施。18年には宗教省と合同で「仏教研究所文学賞」を創設し、仏教に関する小説や詩を公募して表彰している。

90周年の式典は、研究所の後方に新設された宗教省大ホールで挙行され、マハーニカイ派のプン・サエム大長老、トアンマユット派のトゥー・サトー大長老はじめ90人の僧侶、政府関係者ら合わせて約300人が出席した。

プン・サエム大長老

読経の後、プン・サエム大長老が説法に立ち、仏教研究所を「カンボジア国民にとって非常に大切な場所」と紹介。昨今出版されている仏教書の中には校閲が不十分なものが多いことを憂慮し、教えを正しく伝える重要性を強調した。

次いで、根本副委員長が庭野会長の祝辞を代読した。この中で庭野会長は、02年の落成式の印象を明かし、「同じ仏教徒として、仏教文化の再建に関われることは、大変光栄なことであり、有り難いことでありました」と述懐。「仏教研究所は、カンボジアにおける精神文化の根底を為(な)す仏教の復興、普及という点で、極めて重要な役割を担っています」と述べ、さらなる発展を祈念した。

歓迎のあいさつに立ったプロック・ポーン宗教副大臣(ヒム・チェム宗教大臣代理)は研究所の歴史に触れ、三蔵経の編纂、ポル・ポト政権下で失われたクメール語の経典、仏教書の復刻といった功績をたたえた。午後には、文学賞の贈呈式が行われた。

プロック・ポーン宗教副大臣

式典終了後、仏教研究所のソー・ソクニー所長は本会の支援に謝意を表すとともに、「地方の宗教局や各寺の僧侶をはじめとした関係者の協力で、仏教研究所の活動が広がってきました。非暴力を説く仏教の思想を普及させることで、カンボジア社会の平和に貢献することが願いです」と話した。

【次ページ:カンボジア仏教研究所九十周年に寄せて 庭野会長の祝辞(要旨)】