諸宗教者によるバチカンでの第2回「行動の倫理」会議、ウィーンでのKAICIIDのフォーラム(詳報)
第2回「持続可能で不可欠な開発に向けた行動の倫理」会議(通称=「行動の倫理」会議)が2月2、3の両日、バチカン庭園内「ピオ四世のカッシーナ」で行われた。庭野光祥次代会長が世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際共同議長の一人として出席し、スピーチを行った。また、6、7の両日には、オーストリア・ウィーンにあるアブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター(KAICIID)本部で「アドバイザリー・フォーラム」年次会合が開催され、同理事として参加した。
「行動の倫理」会議は、ローマ教皇フランシスコによる回勅「ラウダート・シ」に示された「地球という私たち共通の家について全世界の人と対話を」との方針を受けて開かれた。「気候変動」「貧困」「移民」「暴力」など八つの地球規模の課題に対し、国際的に活躍する各分野のリーダーの連携を図り、グローバルな行動につなげていくことが目的。ローマ教皇庁科学アカデミー、同社会科学アカデミー、WCRP/RfP国際委員会が主催する。昨年10月に第1回会議が開かれ、2年間に計8回開催される。
今回は『平和』をテーマに行われた。同科学アカデミー会長のマルチェロ・サンチェス・ソロンド司教をはじめとする諸宗教者、国連事務総長特別顧問のジェフリー・サックス博士ら経済学者、科学者など約40人が出席。『平和の特質』『正義といつくしみの調和』『倫理的枠組み作り』といった九つの会合が開かれ、紛争や貧困、核兵器廃絶といった現代の主要課題を論議した。
『平和の人類学的および道徳的基盤 “真理のうちを歩むこと”と自由の重要さ』と題した会合では、光祥次代会長が仏教徒の立場からスピーチ。法華経の構成と内容を説明し、宗教者として行動を起こしていく大切さを強調した。
その上で、平和を脅かす根本原因は他者への不信感や恐れ、優越感、競争心と指摘し、周囲から迫害されても仏性礼拝(らいはい)に徹した常不軽菩薩の実践を紹介。「常不軽菩薩に倣い、宗教者が行動に対する信念を持つことで、恐れと不安によって分断された世界に生きる多くの人を手助けできると信じています」と語った。
2日間の会合の後、サックス博士が討議の内容をまとめた提案書を読み上げた。この中で、宗教はこれまで、戦争や紛争の解決に努めてきたにもかかわらず、一方で政治や権力に悪用されることもあったと指摘。平和構築に向け、世界の諸宗教がそれぞれの精神性を生かし、分断されたコミュニティーをつなぐ実践の必要性を強調した。次回の会議は、5月下旬にバチカンで開催される。
会議終了後、光祥次代会長はオーストリアに移動。6、7の両日、ウィーンにあるKAICIIDの本部で開かれた「アドバイザリー・フォーラム」年次会合に参加した。同フォーラムは、諸宗教対話や平和構築といった活動を進めるため、識者から意見を聴取するもの。昨年4月に第1回会合が行われた。今回はKAICIIDのアドバイザーを務める、キリスト教やイスラーム、ヒンドゥー教、ジャイナ教、ユダヤ教などの諸宗教指導者やKAICIID理事ら約40人が参加した。
6日には、ファイサル・ムアンマル事務総長があいさつ。国際情勢に触れながら、紛争や暴力の解決に向け、対話による相互尊重と協力の重要性を語った。この後、フォーラムのメンバーがそれぞれの取り組みを発表。青年による諸宗教対話や、ナイジェリアでのキリスト教徒とムスリム(イスラーム教徒)の和解プログラムなどの事例を紹介した。
翌7日は、「宗教間対話トレーニング」「ガバナンスと共通の市民権」「和解」「宗教間対話分野でのキャパシティ・ビルディング」の4タスクフォースに分かれて分科会を実施。青年世代の参画を促すプログラムの実施や他団体との連携、難民問題に対する草の根レベルでの取り組みの推進などが提案された。
KAICIID
対話を通して、紛争の回避・解決、社会的結束の発展、相互尊敬と宗教・文化間の理解の促進を目的に、サウジアラビアの故アブドッラー・ビン・アブドゥルアジーズ国王の構想と主導により設立された。サウジアラビア、オーストリア、スペインの3カ国が創設メンバー国。バチカンがオブザーバーとして名を連ねる。宗教指導者9人で構成する理事会が執行機関となっている。諸政府と諸宗教の双方が運営に携わっていることが特徴。オーストリア・ウィーンに拠点を置く。