本会最初の社会事業 佼成育子園 庭野開祖、長沼脇祖の教育観受け継ぎ70年

「氏神様のお祭り」で、園児と触れ合う初代園長・長沼脇祖(昭和31年)

庭野日敬開祖が昭和24年11月1日に創立し、長沼妙佼脇祖が初代園長を務めた佼成育子園が今年で70年を迎えた。同育子園の創立は、立正佼成会最初の社会事業。「人格形成の基礎は、乳幼児期につくられる」との庭野開祖、長沼脇祖の教育観を今日まで受け継ぎ、仏教精神に基づいた保育園として運営されてきた。現在、198人の園児が通う。

昭和24年当時、本会は会員が急増しており、婦人部員の幼児を預かる施設が必要となっていた。さらに、22年に児童福祉法が制定され、本部周辺地域の住民からも、幼児保育の場が強く求められていた。こうした状況を踏まえ、「乳幼児期は人格形成の基礎がつくられる最も大切な時期であるだけに、宗教的な雰囲気の中で、慈しみ敬う心を育て、物に対する感謝の心を養い、共同生活を味わわせることは何にもまして大事」との庭野開祖の願いのもと、育子園は創立された。“教育”に目を向け、満3歳から学齢までの幼児を保育する本会初めての社会事業だ。

長沼脇祖が24年から遷化する32年まで園長を務め、32年8月には乳児の受け入れも開始された。32年10月から38年4月まで、庭野開祖が2代園長を務めた。この後、奥沢敬武監事(当時)、長沼基之理事長(同)と続き、今年、13代園長として田中基之氏が就任した。

同園では、開園以来続けてきた、カリキュラムに基づいて集団行動を指導する一斉保育(設定保育)を12年前に見直し、以降、「見守る保育」に取り組んでいる。

「見守る保育」では、保育士が子供を一斉に指導するという立場を取らず、子供たちが自ら考え、行動していけるように、一人ひとりの自主性や自発性を尊重し、各人の発達を“見守る”ことに力点が置かれる。例えば同園では、制作やままごと、読書、外遊びなど子供が自由に遊べるさまざまな環境を整え、好きな遊びを選べるようにしている。昼寝をするか否かも、子供自身が選択する。昼食でも主体性を育むため、子供が食べる量を申告するセミバイキング方式を取り入れている。

近年、子供たちが自分で考え、行動する力がついたことによって、子供主導の多様なプロジェクトが展開されている。その一つが、「さかなプロジェクト」だ。魚好きの男児が図鑑を見るだけでなく、絵を描くようになり、周りの子供たちにも広まった。次第に、A4判の画用紙に収まる絵から、数メートルに及ぶ実物大の絵を描いたり、布を染めて魚を工作したり、和紙のクラゲを作ったりと、そのグループの部屋はまるで水族館になっている。また、深海魚が生息する水温を研究するため、水に氷を入れ、さらに、「海の水はしょっぱいから塩をいれてみよう」と実験し、子供たち自身で塩によって氷水の温度が低下することを発見した。

現在の佼成育子園。緑豊かな園庭には、さまざまな遊具が設置されている

同園では、年齢別のクラスがあるが、見守る保育を取り入れるにあたって、異年齢混合のグループ制を採用。どのグループも3~5歳の子供が共に生活しており、園児は普段、こちらで多くの時間を過ごす。違う年齢の子供同士で遊ぶ体験が増え、同時に、5歳児が3歳児同士のケンカを仲裁するなど、年齢差を生かして、気遣いや思いやりを育むことができるという。

田中園長は、「子供一人ひとりが『自分の気持ちを理解してもらえる、ここにいると安心できる』と思える保育を心がけています。また、保育士が子供たちの成長を見て、『保育って楽しい』と感じてもらえるようにも努めています。子供はそうした保育士と触れ合うと安心し、より積極的に友達や保育士と関わろうとしていきます。一層、居心地の良い場所となるよう、保育士にも、子供にも丁寧に寄り添っていきたい」と語った。