中高生平和学習会で高遠菜穂子氏が講演 人道支援現場から世界と日本を見る

イラクで人道支援に携わる高遠氏が東京西支教区の「中高生平和学習会」で講演した

立正佼成会東京西支教区による「中高生平和学習会」が8月14、15の両日、本部施設などで実施され、この中で、イラクで人道支援に携わる高遠菜穂子氏の特別講演が行われた。参加した学生部員ら45人は、テロや空爆の脅威にさらされた同国の人々の状況を学び、平和への思いを深めた。

講演を企画したのは、実行委員の女性(22)=板橋教会。今年6月、自身の通う大学で高遠氏の講義を聴いたのがきっかけだった。高遠氏はイラク戦争の終結が宣言された2003年5月から現地で医療関連の人道支援活動に従事している。講義の中で高遠氏は、04年にイラク人の武装グループに拘束された際、その構成員から「僕らは友達になれるだろうか」と問われ、「当たり前じゃない」と答えたというエピソードを披歴した。女性は〈なんて心が平和な人だろう〉と感銘を受け、中高生にも講演を聴いてほしいと実行委員会で提案し、実施された。

当日、高遠氏は、『命に国境はない――紛争地イラクで戦争と平和を考える』をテーマに講演。イラク戦争やその後の情勢、「イスラーム国」(IS)を名乗る過激派組織が生まれた背景に触れながら、テロ組織や米軍による攻撃で民間人が犠牲になり、多くの人が心に傷を抱え、苦しい難民生活を強いられている状況を映像を交えて説明した。現地で被害者と触れ合う際、「心の平和」を保つために、「私もISになり得るし、米軍にもなり得る。憎しみや恐怖が転じて自分が加害者になる可能性があると肝に銘じています」と語り、対立や戦争という状況の中でそれぞれが痛みを持っていることを忘れないようにもしていると話した。

講演の後、質疑応答が行われた

また、IS掃討作戦を行った有志連合軍に経済支援した日本も、「戦争加担」との見方があると指摘。国際情勢を正しく読み解くために、海外メディアが伝える情報も得ていく重要性を強調した。

中野教会の女子高校生(17)は、「空爆が行われているすぐそばで生活している人がいることに驚きました。まずは知ることから始め、大変な状況にいる人の役に立ちたい」と語った。

企画した女性は、「今この瞬間も世界には戦争の犠牲になっている人がいます。その現実に私たちから目を向けていきたいと思っています」と話した。