イスラームのラマダン、仏教のベサク祭に向けて バチカンがメッセージ(海外通信・バチカン支局)

バチカン諸宗教対話評議会は5月10日、イスラームのラマダン(断食月、今年は5月5日~6月4日)を迎え、世界のムスリム(イスラーム教徒)に向けたメッセージを発表し、誰もが平等に享受されるべき「普遍的な友愛が促進されること」を願った。

この中で同評議会は、今年2月にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで、ローマ教皇フランシスコとイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長が署名した「人類の友愛に関する文書」を引用。「私たちの宗教が、『平和という価値に根を張り、相互理解、人類の友愛、調和のとれた共存といった価値を守り、叡智(えいち)、正義、愛を再構築』するようにと誘(いざな)う」と呼び掛けた。これにより「恐怖と無知によって築き上げられた“壁”を打ち壊し、全人類にとって善の基盤である友愛の“橋”を築くことができる」と訴えた。

また、普遍的な友愛は、「家庭や、政治、市民の活動、宗教分野において涵養(かんよう)すべきで、暴力の拒否、人間の尊重といった新しい生活形態を生み出していく」と強調。この友愛が広がっていくには、「対話の文化がつくられ、相互に理解する手段がさまざまに継続されていくことが必要になる」と訴えている。

諸宗教間の対話と、それによる相互理解がなされていくには、「自身のアイデンティティーを守る義務」「他者へ門戸を開放する勇気」「誠実な意図」という三つの原則が欠かせないと主張。さまざまな宗教が共存する世界においては、多様性を尊重する対話によって、人々の生命と身の安全が保障され、良心、思想、表現、信教の自由といった基本的人権が守られていくべきだとのメッセージを寄せている。

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