第36回庭野平和賞贈呈式 受賞者のジョン・ポール・レデラック博士が記念講演

紛争の調停や平和構築に長年取り組んできた博士は記念講演の中で、人類の多様性を生かし、“地球家族”が団結する大切さを強調した

贈呈式では、庭野平和賞委員会のアン・ジェウン委員長(韓国YMCA評議会理事長)が選考結果を報告。庭野名誉会長からレデラック博士に賞状と顕彰メダル、賞金2000万円(目録)が贈呈された。

あいさつに立った庭野名誉会長は、人間は誰もが仏の心と鬼の心を同時に具(そな)えているという仏教の「十界互具(じっかいごぐ)」に触れ、「相手を怨(うら)み、非難し、攻撃する心から、相手を信頼し、慈しみ、敬う心へと進化させていくのが、『紛争変革』への具体的な歩みであり、それを根底で支えるのが、メノナイトの信仰の力でありましょう」と信仰に基づく博士の功績に敬意を表した。

続いて、柴山昌彦文部科学大臣(藤原誠事務次官代読)、日本宗教連盟の岡田光央理事が祝辞を述べた。

この後、レデラック博士が記念講演。自身の活動に影響を与えてきたものは、信仰に加え、暴力が常態化した紛争下でも勇気と思いやりの心を持って行動し続ける市井の人々の姿、そして、想像力をかき立てる俳句であったと述懐した。

また、現在、国籍や人種、宗教の違いをもとに不安や不満を煽(あお)る排他的な政治や、収奪的な経済による人々の分断が世界では続いていると指摘。苦しみを抱え、生活の場を追われた人があふれている状況に対し、多様性を認め合い、“地球家族”が団結する重要性を訴えた。

レデラック博士の提唱する「Conflict Transformation」(紛争変革)について

熊本大学大学院の石原明子准教授の報告などにあるように、紛争の解決や平和の構築について研究する学術分野で「Conflict Transformation」という英語は、「紛争変容」と訳されることが多いものの、レデラック博士の著書の翻訳では「紛争変革」(水野節子、宮崎誉共訳)とされ、このほか、「紛争の転換」(ヨハン・ガルトゥング著、奥本京子訳・伊藤武彦編集)、「紛争移行」(オリバー・ラムズボサム著、宮本貴世訳)などがあり、翻訳は定まっていません。このため、本紙では、庭野平和財団の発表と博士の著書の翻訳に沿い、「紛争変革」としています。

※レデラック博士の記念講演と庭野名誉会長挨拶の全文は、後日掲載します