人類の苦に対して祈りを捧げる教皇、カンタベリー大主教(海外通信・バチカン支局)

キリストの受難と十字架上での死を追憶する「十字架の道行(みちゆき)」が4月19日、ローマ市内のコロッセオを舞台に行われ、世界から2万人を超える信徒が参加した。「十字架の道行」は、ローマ教皇フランシスコが出席して毎年の復活祭(今年は21日)前の聖金曜日に執り行われる。今年は「ワールド・ビジョン」で各国に放映された。

今年のテーマは『キリストの十字架と難民、移民、そして、現代の奴隷制の犠牲者たちが担う十字架』。式典を祈りの形で結んだ教皇フランシスコは、「主なるキリストよ、あなたの十字架のうちに、世界が背負う全ての十字架を見ることができるように、助けてください」と嘆願した。

教皇の指摘する、人類が背負う十字架とは、「恐怖や政治的な思惑(ポピュリズム)によって閉ざされた心を基にして、門戸を閉鎖された移民たちの十字架」「年齢と孤独の重荷を背負う高齢者の十字架」「その無実さと純粋さを蹂躙(じゅうりん)された小さな子供たちの十字架」「信仰の慰めを持ち得ない人々の十字架」などだ。また、「不安の暗闇と刹那的な文化の暗黒の中で放浪する人類の十字架」「私たちの利己主義と権力追求の貪欲さによって、しぼんでいく私たちに共通の家(自然)が担う十字架」も挙げ、「福音に忠実であるべきキリストの教会が、教会内の洗礼者たちに対してさえも、キリストの愛を伝え得ない十字架」に言及しながら、「キリストの復活と、キリストによる全ての悪と死の克服に対する希望」を訴えた。

一方、英国国教会の最高指導者であるカンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー師は、英国国教会と世界の聖公会に向けて復活祭のメッセージを公表した。この中で大主教は、「創造界(自然)が人間の怠慢と利己主義に苦しんでいる」「人類が戦争と恐怖に耐え続けている」「(世界の)政治、経済システムが、過激主義と無関心という二つの脅威によって、きしんでいる」との警告を発した。この指摘のように、「多くの国民と国家が困難な時に直面している」という状況下にあって、「私たちは、キリストの復活を基盤とする希望のメッセージを伝えていかなければならない」と訴えた。

バチカン広場で教皇が司式する復活祭ミサは、スリランカで発生した三つのキリスト教の教会とホテルを標的とした爆弾テロ攻撃のニュースが刻々と伝わる中、進行した。ミサの後にサンピエトロ大聖堂の中央バルコニーに立った教皇は、世界に向けた復活祭メッセージの中で、「スリランカにおいて復活祭の日に、いくつかの教会と施設に対して死と苦をもたらした重大な攻撃が発生したとのニュースを、悲しみと苦を持って受け取った」と述べた。その上で、「祈りを捧げているさなかに、攻撃されたキリスト教共同体と、この野蛮な暴力の犠牲者たちに対する情愛のこもった連帯」を表明した。さらに、教皇は、「長引く戦争の犠牲となったシリア」「絶え間ない分裂と危機によって引き裂かれた中東」「飢餓と戦争に疲れ果てたイエメンの子供たち」「流血と武力闘争が続くリビア」「社会の緊張、そして過激派の暴力による紛争が各地で起きているアフリカ大陸」などの状況に思いを寄せ、「復活したキリストが、平和の賜物(たまもの)でつつみ、武器の轟音(ごうおん)を停止させてくださるように」と願った。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)