『出生前診断について考える』 教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」が研究会

立正佼成会の中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」の第19回研究会が3月26日、東京・港区の浄土宗総合研究所で開催された。9教団の付置研究所から18人が参加。同学術研究所学術研究室の相ノ谷修通室長ら3人が出席した。

この研究部会は、同懇話会の分科会の一つで、宗教的な視点から見た「脳死・臓器移植」「安楽死・尊厳死」など、生命に関する倫理的な課題について意見を交換している。

当日は、『出生前診断について考える』と題し、同学術研究所の野村真木子研究員が発表に立った。

野村氏は冒頭、日本で2013年に導入された、妊婦の血液から胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(NIPT)について説明。日本産科婦人科学会は、検査できる医療機関を増やすため、今年から条件を満たした小規模施設や開業医のNIPTの実施を認めるなど、施設要件の緩和の動きが強まっている現状を伝えた。

さらに、出生前診断に関する日本での議論について報告。選択的中絶について、「女性の自己決定を尊重する立場と胎児の生命を尊重する立場」、「障害者との共生を重視する立場と障害者の出生を予防する立場」の二軸から、複雑な議論状況を整理した。

こうした状況に対して野村氏は、社会学者の大澤真幸氏や哲学者の森岡正博氏らの研究を紹介しながら、自らの存在を無条件で肯定される「根源的な安心感」が、人間の健全な精神を育む重要な要素と主張。母親が出生前診断の結果を受けて出産したという事実を知った子供は、「自分は障害がないから生まれた」という「条件付きの生命」である認識をしかねず、自己同一性の基盤を失わせる可能性があると述べた。

さらに、現代では、束縛されずに多様な選択ができることを「自由」と認識する傾向にあるが、それは「自由」という価値を部分的にしか捉え切れていないことを指摘。先の大澤氏や哲学者の國分功一郎氏の研究を紹介しながら、「必然」に従うことで享受しうる〈自由〉があることを強調した。そして、病や死、障害など避け難いものを受容することを説く宗教は、自由を否定せずとも後者の〈自由〉を語りうるのであり、「発展を続ける生命科学技術に対して、宗教的な視点に基づく新たな倫理的価値を社会に訴えていくことができる」と話した。