WCRP/RfP日本委 仙台市内で「震災から9年目をむかえる宗教者復興会合」

庭野会長 開会挨拶(要旨)

WCRP日本委員会は、二〇一一年三月十一日に発生した東日本大震災の深刻な状況を踏まえ、直ちに各ご教団をはじめ、関係する方々に緊急勧募のご協力を頂きました。また青年部会や各ご教団による街頭募金が行われ、多額な浄財が寄せられました。

それらの浄財は、緊急支援として、被災地の災害対策本部、社会福祉協議会、NGO、NPOなどに寄託させて頂きました。同時に、地域に根づいた継続的な支援が必要との観点から、特別事業部門、いわゆるタスクフォースを立ち上げ、その活動にも浄財が充てられました。

活動の主体となったタスクフォースは、仙台に事務所を設置し、スタッフを常駐させました。そのことにより、地域の諸宗教組織、行政、社会福祉協議会、NPO、大学などとの連携が深まり、現地のニーズに沿ったきめ細かい支援を行うことができたのではないかと思っております。

具体的には、被災された方々の「心のケア」を中心とし、コミュニティづくり、被災地域の人材の育成、特別な配慮を必要とされる方々への支援など、多岐にわたる活動が行われてまいりました。

こうした諸活動を進めるにあたり、私どもは、宗教者として、どのような精神で復興支援に取り組むかを、常に問い続けてまいりました。そして、次の三点を事業の方針に据えました。

第一は、「『失われたいのち』への追悼と鎮魂」です。地震と津波によりお亡くなりになられた方々への追悼と鎮魂こそが、復興支援に取り組む起点であると考えたのであります。

第二は、「『今を生きるいのち』への連帯」です。被災された方々のみならず、その地域に住む人々、宗教者をはじめ、行政、企業、社会福祉協議会、NPO、大学に従事する人々との「連携」「つながり」の醸成が、復興活動の基盤であることを再確認致しました。

そして第三は、「『これからのいのち』への責任」です。自然との共生をどう図っていくか、地球環境を破壊せずに持続可能なエネルギーをどう確保していくか、そのために我々はどのような生き方をすべきか――こうした課題に対し、宗教的な智慧(ちえ)に基づいた提言や活動が不可欠であることを、震災によって思い知らされたのであります。

これらのことは、私ども宗教者が常に大事にすべきことです。WCRP日本委員会の復興支援活動は、本年三月をもって一区切りをつけることになりますが、今後は、各教団レベルにおいて、いま申し上げた三つの方針が継続されていくものと信じております。

私は、東日本大震災の発生から二週間後、福島、宮城、岩手の三県を訪れ、被災状況を目の当たりにしました。瓦礫(がれき)の山、焼け焦げた臭い、悲しみの中でも懸命に生きている人々の姿を、いまも忘れることはできません。

そして現在、表面的には、かなり復興したように見えますが、被災した方々は依然として、いくつもの重荷を背負われています。

三週間ほど前、私は、西日本豪雨の被災地である岡山県、広島県を訪れ、被災した方々の話を伺ってまいりました。また昨日まで、福島県の磐城、平、そしてここ仙台で、被災から今日までの様子を聞くことができました。

自然災害に遭った方は、百人いれば、百通りの困難に出遭っておられます。肉親を亡くされた方、怪我(けが)や病気を経験された方もいます。被災状況、家族構成、年齢、居住地、金銭的余裕なども、それぞれ異なり、決して標準化することができません。

だからこそ、よりきめ細かな触れ合いが必要であり、そこに宗教者の役割があることを実感致しました。

私どもの先人は、かつて津波の被害を受けた場所に、「これより先に家を建ててはいけない」と記した石碑を数多く残してくれました。「同じ苦しみを味わわせたくない」という願いの表れですが、現実には、さまざまな事情により、他の場所に移り住むことが難しいという方もおられます。また、世代が変わるごとに、そうした教訓そのものが忘れられてしまいがちです。

温暖化などの人為的な気候変動に対し、我々がどのようなライフスタイルを確立したらいいかという問いにも、真の答えは見出せていません。

そうしたさまざまな課題を曖昧にしたままでは、やがて同じ災禍を繰り返すことになります。私どもは、確実に一歩一歩、創造、進化していかなければならないと思っております。

(文責在記者)