庭野平和財団によるGNHシンポジウム 東アジアの伝統社会に学ぶ

現在、農業を営む田氏は、共同体の研究を重ねながら、コミュニティーづくりのあり方を模索してきた体験を基に、単発的なイベント開催などでは人と人との関係の構築に限界があると述懐。持続可能なコミュニティーをつくるには、自らがそこで「生きる」視点が重要と気づき、韓国・済州(チェジュ)島で有機農園とコミュニティーカフェの運営を始め、農園で働く高齢者や無償でカフェを手伝う客とのエピソードを交えながら、「食によって交流し、連帯につなげています」と話した。

オリヤンハイ氏は、出身地である内モンゴルの北毛都村で、20年前に枯渇した湖の再生と、牧畜の復興を目指す自身のプロジェクトを説明。この地域では、以前に遊牧生活が主だったが、その当時の方が定住生活の現代よりも、自然との共生を図り、環境に適した循環型社会システムが機能していたと報告した。今後は生態系を修復するとともにエコツーリズムを導入し、地域先進モデルを実現したいと述べた。

この後、3人による鼎談(ていだん)が行われた。

第10回GNHシンポジウムを迎えて

高谷忠嗣専務理事

庭野平和財団 高谷忠嗣専務理事

GNHシンポジウムは庭野平和財団30周年記念事業として2008年に始まり、以後さまざまな方とのご縁の中で年に一度開催してきました。開催のきっかけは、“全世界的な規模で物事を考え、実践は足元から”という意味の「Think Globally Act Locally」の言葉との出合いでした。平和の実現について考える上で、幸せとは何かを考えることは非常に重要です。GNHという一つの指標を基にして、幸せという大きな概念を身近な枠組みに引き寄せて参加者の皆さまと共に考えていく、そうした試みが10年間で実現できたのではないかと思っています。

さらに、この事業は、庭野平和財団の方向性にも大きな影響を与えました。従来の諸宗教間対話や国際協力などへの支援活動に加え、国内外のさまざまな地域の諸課題に取り組む人々との出会いを通して、各地域社会の強みを再発見する活動の大切さを教えられたのです。持続可能な社会を築いていくため、足元の実践に目を開いていくことが、庭野平和財団の指針に加わりました。

このシンポジウムは10年を迎え、今回でいったん一区切りとなります。ただし、この10年間の蓄積を大切にし、今後もGNHの考え方に基づいてテーマを設け、さまざまな団体や人々とのつながりを通して私たちの役割を果たしていきたいと考えています。