東京佼成ウインドと共演 指揮者のカーチュン・ウォン氏に聞く

東京佼成ウインドの11月の定期演奏会で指揮を担当するウォン氏

アジアの若手指揮者として知られるカーチュン・ウォン氏は、11月23、24の両日に行われる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の定期演奏会で指揮を担当する。先ごろ来日したのに合わせ、今回の演奏会の聴きどころ、TKWOとの共演に対する思いなど、話を聞いた。

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今回の演奏会は、“美術館”をイメージしています。ホールに入って私たちの演奏に耳を澄ませると、美術館で絵画を鑑賞したような感覚が心に湧いてくる――そんな演奏会にしたいと願っています。

楽曲の一つ、「組曲『展覧会の絵』」は、もともとモチーフになっている絵画があるのでイメージしやすいと思います。「呪文とトッカータ」は魔女が踊っているような情景が浮かび、「交響詩『スパルタクス』」は古代の英雄を思い描けるでしょう。演奏を通して音色が心に響くとともに、絵画を鑑賞しているような、絵が思い浮かんでくるような感覚をぜひ味わってみてください。

佼成ウインドの指揮を務める今回の演奏会は、私にとって、とても感慨深いものがあります。というのも、私は母国(シンガポール)の中学校で吹奏楽部に入り、トランペットを担当していたのですが、コンクールの全国大会に向けて、佼成出版社が制作した佼成ウインドのCDを毎日聴きながら、練習に励んでいたからです。そのコンクールで演奏した曲は「呪文とトッカータ」。今回の演奏会で最初に聴いて頂く曲です。ここにも意義深いものを感じています。

中学生の時、初めて耳にした佼成ウインドの演奏に、ただただびっくりしたことを覚えています。作曲者が求める速いテンポを正確なテクニックで表現し、感情豊かにメロディーを奏で、それまで聴いたことのない、まさにプロフェッショナルな演奏に心を動かされました。

聴くたびに憧れが募っていく佼成ウインドの存在は、当時の私にとっては「神」のような、「アイドル」のような存在でした。今も、その時の思いは変わることなく、世界最高峰にある吹奏楽団との敬意を持っています。その佼成ウインドを指揮する機会に恵まれたことは、単純に「喜び」というだけでは表せない、感謝とうれしさが複雑に交じり合った最高の気持ちです。メンバーと共に最高の音楽をつくっていきたいと心から願っています。

全身で「楽しかった」と感じて頂ける音楽のひとときをお約束します。