女性のライフサイクルと心 広島大学大学院の岡本教授が講演 中央学術研究所の研究会で

『女性のライフサイクルとこころの危機――「個」と「関係性」からみた成人女性のこころの悩み』をテーマに、立正佼成会の付置研究所である中央学術研究所による「第11回善知識研究会」が10月28日午後、東京・杉並区のセレニティホールで開かれた。同研究所講師、客員研究員、教育、医療、法曹など各分野で活躍する会員87人が参加した。教団から今井克昌教学委員長が出席。庭野統弘学林学長が議長を務めた。

広島大学大学院の岡本教授

研究会では、同研究所の川本貢市所長が大会趣旨を説明。続いて『女性のライフサイクルとこころの危機――「個」と「関係性」からアイデンティティをとらえる』と題して、広島大学大学院教育学研究科の岡本祐子教授が基調講演を行った。岡本氏は、女性の社会進出に伴い、結婚、出産・子育てと仕事との両立などライフコースが複雑に枝分かれし、人生の選択肢の幅が拡大してきた状況を解説。成熟した「大人」に成長するためには、仕事への関わりなど「個としての自分」と、子供を生み育て家庭を営むことなど「他者との関わりの中での自分」という両方の生き方が機能し、均衡を保つことが重要であると強調した。

ただ、中年期とされる40代に入ると、体力の衰えや老化の自覚、子供の親離れや夫婦関係の変化、仕事への限界感の認識といった人生の“曲がり角”に直面し、後半生の生き方を再構築しなければならないというアイデンティティの危機を迎えると指摘。そのストレスから抑うつ状態やアルコール依存症、生活習慣病の増加などに陥る可能性を指摘した。

こうした中年期の危機を切り抜けるための心がけとして、岡本氏は「女性の人生は、『個』と『関係性』のはざまで揺れることが多い。中年期の危機とは、心の発達の分岐点を意味する。人生の岐路に差し掛かった時は、しっかりと自分を見つめ、他者との関わりを求めていけば、心の成長とメンタルヘルスにつながっていく。それは佼成会における人格完成の目的とも通じるのではないか」と語った。

続くパネル討議では、岡本氏、川本所長、平野京子大田教会長、東京家庭教育研究所の矢部和子所長が登壇し、庭野学長がモデレーターを務めた。中年期を迎えた女性の心の危機に対する、宗教や本会の信仰が果たす役割などについて意見が交わされた。

パネル討議では、中年期を迎えた女性の心の危機について意見が交わされた