WCRP/RfP日本委などが開催する連続講座「核の脅威削減に向けて」 清水寺で最終回
この後、第3回までの講座の講師を務めたピースデポの梅林宏道特別顧問、日本赤十字社長崎原爆病院の朝長万左男名誉院長、長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長に加え、中央大学の目加田説子教授によるパネル討議が行われた。PRIMEの高原孝生所長が司会を務めた。
この中で梅林氏は、南北首脳会談や米朝首脳会談の実現など、朝鮮半島の和平交渉に進展が見られている今こそ、「北東アジア非核兵器地帯」構想の実現に取り組むべきと発言。非核兵器地帯とは、地帯内での核兵器の開発や製造を禁じると同時に、核保有国に対し地帯内の国への核攻撃や威嚇の禁止を約束させるもので、北東アジアの非核化によって日本は米国の核に安全保障を託すことなく、被爆国として世界の非核化に貢献できると述べた。
また、朝長氏は、非核兵器国や市民社会が中心となり取り組んできた核兵器禁止条約と、1968年に採択された核不拡散条約(NPT)が、核軍縮のあり方をめぐり対立関係になっていると指摘。一方、NPTで定められた核兵器国(米、露、英、仏、中)の核軍縮は近年停滞しているものの、核兵器は73年にわたり使用されておらず、NPT体制の中で「核の不使用が一種の規範になっている」事実を踏まえ、対立状況を解消し、全ての人の安全が守られるよう進めていく必要があると語った。
鈴木氏は、世界では、核兵器の材料となるプルトニウムや濃縮ウランの貯蔵量が増え続け、原爆に換算すると約10万発分以上に相当すると解説した。特に「核燃料サイクル」を推進している日本のプルトニウムの保有量は47トンに上り、国際社会が懸念していると説明。核兵器への転用が危惧される中で、プルトニウムを「資源」と捉えてきた従来の価値観を転換し、国際協力のもと、削減に舵(かじ)を切るべきと訴えた。
核不拡散条約(NPT)
核兵器の拡散を防止する目的で1968年に成立し、70年に発効した国際条約。191の国と地域が締約する。67年までに核兵器を保有していた米国、ソ連(現在のロシア)、英国、フランス、中国5カ国の核保有を認め、それ以外の国の核の開発、製造、入手を禁止した。核兵器国に対しては、核兵器の譲渡や、非核兵器国による製造を禁止するとともに、核軍縮の促進を義務づけている。